さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

若者自ら「やりがい搾取」に陥る構造を見事に描いた『命売ります』5話

脚本:神田優 演出:石井満梨奈

ゲスト俳優:大谷亮平山崎銀之丞矢本悠馬

 

原作にないオリジナルな話で、ブラック企業が舞台。ブラックなIT企業で働き、衝動でビルから飛び降りるも助かった、プロジェクトリーダーの鎌田が、ブラック企業であることを世間に知らしめるため、過労死で死んでくれと羽仁男に依頼~といったあらすじ。

 

ブラック企業を扱ったドラマは数あり、つい最近も野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』でも従業員が立ち上がる姿が感動的に描かれていましたが、この話は単純に搾取する経営者VS社員といった構図ではなく、社員自らが仕事を生きがいとしているが故にブラックな働き方を肯定、実践してしまい、そこからはみ出すものを軽蔑しだすといった、気づかず「やりがい搾取」されている若者が描かれています。これは、少し前に話題になった居酒屋甲子園あたりを参考にしているのではないかと思いますが、こういったある種のねじれを描いたドラマは自分が知る中では初めてです。

色々とひねりの利いた、生きがいや働きがいがもたらす落とし穴を描き、ホラーチックなオチも秀逸な脚本プラス演出も良く、石井満梨奈さんは、これまでプロデューサー業をしており、今回が初演出のようなんですが、朝礼で復唱させる社訓の『 死んでも諦めるな! 死んでも休むな! 死んでも戦え!』にダンスめいた身振りをつけて繰り返し見せる、コミカルに滑稽さを出す演出など面白く、今後の活躍を期待させます。

2018年冬季アニメ 視聴継続作 現段階の感想

2018年1月放送開始のアニメの中で視聴継続する予定の作品の現在までの感想。好み順に並んでいます。

 
BEATLESS

ディオメディア制作ということで、懸念していた全体的なクオリティの面はやはり残念な部分はあるけど、SFとして魅力的で興味深いので暫定1位。

 

伊藤潤二『コレクション』

アニメとして動いて声がつくと、ホラー要素よりギャグ要素が強くなってるような気がしますが、それでも面白い。

 

刻刻

ジェノスタジオ初のTVアニメ作品。まだ面白さがあまり見えてこない感じなのですが、水木しげる先生や伊坂幸太郎さんが評価しているようなので今後の展開に期待。

 
グランクレスト戦記

ロードス島戦記』のOVAを最近AbemaTVで見返したばかりなのですが、それと比べるとやはりストーリーやキャラの魅力がいまいちという感じがしてしまう。ほぼ主役はシルーカといってもよく、テオの存在感が薄くあまり魅力がないので、今後しっかりとした活躍かあるかどうか。

 

恋は雨上がりのように

演出が良いので見れていますが、ドラマが弱く、いまいち話にノレない。今のところ店長だからこそといった強い感情が感じられず、あの時優しくされたのが別の人でも惚れてたんじゃないか?と思ってしまいます。

 

ポプテピピック

基本的にはすごくTV的で、過去の子ども向けバラエティをオタク向けに再生産しているといった印象。面白いと感じるのはボブネミミッミぐらい。

 

ダーリン・イン・ザ・フランキス

あくまで現時点での感想で、評価が覆る可能性があることを前提に書きますが、今の時代にこういうものしか作れないのはセンスが死んでいるとしか思えません。過去にある性行為のメタファーを強調するようやロボットアニメとは違い、シリアスでセリフも含めた直接的な表現が面白さに全然繋がっておらず、ネタとしても笑えず、ただ下品なだけ。唯一いいと思えるのはメカデザインくらい。

AbemaTVオリジナルドラマ『#声だけ天使』 1話

原作・脚本: 横内謙介
監督: 尾形竜太

出演:亀田侑樹、佐久本宝、松本妃代、久ヶ沢徹、山口景子、仁村紗和 ほか

1話ゲスト:野沢雅子古川登志夫柿沼紫乃野島健児白石涼子阿座上洋平、大和田仁美、亀田興毅

 

主役陣はオーディションで選ばれ、ほぼ無名な役者ばかりということで、メジャー俳優でない役者の活躍が増えたらいいなと思う次第で、今後の企画にも期待したいところ。

声優学校に通う主人公が、オーディションがビジュアル重視であることに怒りを覚え、クラスメイトの5人で、ボイスリクエストサービスを始め、その中で恋愛要素も絡む青春もの。

脇役も含め、キャラも過剰すぎず、自然な感じで違和感なく、個性的な人物揃いで楽しく、掛け合いもテンポよく、普通によくできたドラマであると思います。

ただ、メイン5人の中で、久ヶ沢徹さんが、役者としてのキャリアが長いこともあってか、普通にいい声で発声よく喋り、演技もうまいので、そのままプロとして通用するだろうと思ってしまうという意味で少し浮いているところはあるかも(笑)

気になる点としては、ボイスサービスというのは、現実では当たり前に個人がやっていて、2年前にサービス終了しましたが「こえ部」というのもあったりして目新しさはなく、あまりこういったところからメジャーまで駆け上がったというケースは聞かないので、声優として成功というストーリーになるならそういった面でのリアリティがどこまで出せるかといったところ。

あと、出てくるオタクワードがエヴァ、ヤマト、サクラ大戦と何故かやたら古臭く、今のオタク像とずれていて、意図的かもしれないけど少し違和感が。脱サラしたテラさんや、年齢不詳のしのぶの影響となら自然ですが、元々仲良しというわけでもない感じなので。

BSジャパンドラマ『命売ります』 1話

http://www.bs-j.co.jp/inochiurimasu/smp/

 

監督:金澤友也、河原瑶(4話・6話)、石井満梨奈(5話)

脚本:小山正太、大林利江子、加藤公平、神田優

出演:中村蒼、YOU、田口浩正 ほか

 

三島由紀夫原作で、2年前にベストセラーになった作品のドラマ化。

原作は未読。原作自体が娯楽性が高い大衆小説のようで、お色気もありの誰でも楽しめるような内容となっており、ノリとしては『特命係長 只野仁』に文学性が加わった感じのものといった印象。

OP曲が人間椅子で、それをバックに1話にもゲスト出演している田中泯がダンスするといった格好いいもので、それだけでも見る価値あり。

中村蒼演じる主人公の山田羽仁男は、仕事ができて不自由ない生活を送っていたが、ふと先が見える人生に絶望し、自殺を決意するという、なんとも贅沢な悩みで、あんまり共感は出来ませんが、後半になるにつれ滑稽さが出てきて魅力が出てきます。しかし、女性を口説くのに人に貰ったハウツー本に頼るなど、天然的であんまりデキる人間には見えないという(笑)

羽仁男が通う行きつけのカフェのマスター(YOU)が、羽仁男が死にたがってることを知った時の反応が軽すぎとかツッコミどころはあるけど、そこもまた楽しめる要素でもあり、どんな結末を迎えるのか気になります。

 

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 

 

 

 

 

 

 

『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』 ネタバレなし感想

基本的には活劇エンタメなので、あまり語ることはないのですが、面白かったです。

 

数々のドラマを手がけた、ラブストーリーの名手である大石静さんの初アニメ脚本で、その手腕がこの作品でも発揮されており、ヒロインが禁断の恋をし、様々な壁を乗り越え向き合っていく様を壮大に描いていて、心を打たれる。アレサンドのエピソードもよく、人の愚かさ、哀れさが凝縮されていた。ただ、個人的な好みを言えば、ラブストーリーを主軸とした壮大なファンタジーとしては『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』には及ばなかったかなと。

 

不満点は、シャリオスの描き方が中途半端なところがあり、魔族を奴隷化し、迫害していた理由が不明瞭で、古代兵器を復活させるために負のパワーみたいなものが必要なのかなと思っていたが、そうではなかった。人間ファーストで世界の秩序の安定を考えていたことは伺えるが、その辺のことはニーナにちゃんと叱って欲しかった。

 

カイザルの最後の扱いやニーナの恋愛模様がメインなことに、前作のコアなファンの批判が脚本家である大石静さんに向けられているのを目にしますが、大石さんの責任にするのはお門違いで、大石さんのインタビューを読めばわかりますが、プロデューサーが話の大枠を考え、打ち合わせを重ねて、守るべきところは守って修正し、最終的に監督が認めたうえで作られているわけですから、批判するならば監督も批判すべきです。

 

まだ、続編の可能性を残しているので、期待して待ちたいと思います。

 

 

 

作り手の驕りと逃げが目立った『Re:CREATORS( レクリエイターズ )』

まず感想を簡潔に言うと、思い入れもないキャラたちによる微妙なシナリオのスーパーロボット大戦というのが正直なところ。

特番が3話入ったのは、あおきえい監督のインタビューで語られていますが、要は公開されている広江礼威氏の原作シナリオ通りに作ったら枠が余ったので特番で埋めましたってことだと思うのですが、余裕があるなら何故もっと各々の作品内エピソードを描かないのか疑問。承認力のある人気作を説得的に描かなければならないといった課題から逃げて、雰囲気だけ人気があるように見せているとしか感じず、思い入れを持てない要因となっている。特にアルタイルのバックボーンが描かれていないことは致命的で、21話でセツナが語った『あなたは同時に弱き者の王様。弱き者の騎士。そうやってあなたを見る人がたくさんいたのです。』『私みたいなどこかで折れてしまいそうな人達にこの世界でもう一歩だけ進む力をあなたが与えてくれるんです』が、唐突すぎて、そんなバックボーンがあったの!?とキョトンとするしかありませんでした。

そもそもアルタイルについて、ソシャゲのキャラがある程度人気になるのはわかるけど、その改変二次創作キャラ動画が300万再生超え、その派生動画も人気になるというのが非現実的に感じ、そんなに人気なのに創造主の人たちは全く知らないというのはどうなんだとも思う。あと、ホロプシコンの能力で最後に出された、設定をリセットするとかなかったものにするというのは、そんな設定の二次創作を作った人がいるということで、ずいぶん都合がいいなと、苦笑してしまった。

結局、世界崩壊のプロセスは、メテオラが解説した通りのもので正解なのかどうか、誰も世界の修復力の作用によって弾かれず、現実に対して影響もないままラストバトルを迎えたので、よくわからずのまま。承認力でキャラを現界させたりしても何も起こらないんだから、見立ては完全に間違っているんじゃないかと思ってしまう(笑)

一番首を傾げたのは、チャンバーフェスの観客の反応で、最初に戦った時にセレジアがまみかに対して言った「あなたの物語はみんな物分かりが良かったのね」状態になっており、おかしな点を箇条書きにすると、

  • 前日譚である程度辻褄を合わせているだろうとはいえ、展開や会話についていけてるのが不思議
  • ひかゆが翔を倒す展開や、アルタイルが次々と主役キャラを倒して、各キャラのファンは何とも思わないのか
  • ネタバレに対して笑って突っ込む人ばかりなのは現実的でない
  • 主役勢より、アルタイルが共感されて承認力を得た転換点が謎

といった具合で、画面に否定的なコメントも映しているとはいえ、基本的には承認力に影響がないという従順ぶり。承認力の活かし方として、アルタイルが承認力を奪うということ以前に、承認力によって展開が左右されて作者勢があわててシナリオをリアルタイムで修正し、指示したりとかいった活かし方があったのではないか。

テーマである、クリエイターの業や想い、作品により受け手側が新たな視点を得たり刺激を受け、それがまた別の創作にも繋がるようなミメーシスを起こしたりする物語自体の偉大さを謳っていることは良いが、ある種、自明であることをそのまま出してしまっていることの恥ずかしさがあり、狡い感じがしてしまいます。一方で、セツナが自殺した動機である炎上事件で、受け手の身勝手さ、気楽さも描いているが、作り手側は神聖化されていてバランスが悪い。ぞんざいな仕事をする創造主を出したり、現界したキャラがエロ同人誌を読んでしまい、ショックを受けてアルタイル側に寝返るような展開などあったらよかった。

ストーリー以外の部分では、セレジアが承認力により新たな力を得るところ以外のバトルがアルタイル無双すぎて、技を次々と繰り出すのがだらだら続く単調なものになってしまっていたことが気になった。あとは前作も含み、フィルムとして熱がなく、脚本マターで監督のこれがやりたいという作家性が薄いのは残念で、自主会社のオリジナルなのだから、次作はそういう面を出して欲しいと思います。

 

Re:CREATORS Original Soundtrack

Re:CREATORS Original Soundtrack

 

 

『お母さん、娘をやめていいですか?』へのカウンターとしての『過保護のカホコ』

『お母さん、娘をやめていいですか?』(以下、オカムス表記)は、今年NHKで放送された井上由美子脚本のドラマで、娘を支配し、依存する毒親を描き話題となった作品で、『過保護のカホコ』(以下、カホコ)と共通点は多い。しかし、描かれ方は正反対的で『オカムス』が狂気を帯びた深刻なサスペンスである一方、『カホコ』はコメディ調のホームドラマである。

 

加穂子の家族や親族の家庭のゴタゴタは、幼少期に母親が出ていった麦野初からしたら「心温まるエピソード」であるとして、あくまで恵まれた家庭として位置付けており、これが、遊川さんが込めた願いの核であり、そういったメッセージはドラマの中で殆ど台詞で説明されている。人間は皆、欠点があるという前提に立ち、不幸にならない、しないために何ができるのか考え、心のドアを開ける鍵となる存在の必要性を説いている。最初は過保護であることが麦野初を通して否定的に語られていたが、最終的にはその初も加穂子に保護をされて居場所を見つけており、過保護で何が悪いのかといった結論に至るのだ。

 

一方、このドラマを、家族愛、家族は仲良くしなければいけないといった価値観の押しつけと感じ受け付けなかったり、呪いと受け取るような方もいると思われるが、糸や教子おばさんのことを見ると、そういった面を相殺する役割を担っていると思われる。糸は、親のことを退屈な人間と思っており、それは改心した後でも恐らく変わっていない。「親や兄弟なんてどうでもいい。血縁関係ってだけでなぜ愛さなければいけないのか」「自分は愛のない人間」と語っていた教子おばさんは、最終的に愛に目覚めたように見える。しかし、「自分が傷ついたり失敗したりしてもいつでも帰ってこれる場所があることがどれだけ幸せなことか私が一番よくわかってる」というのは本心としても、フリースクールを作ろうと考えたのは、高齢者向けのパソコン教室をやろうとしたノリと本質的には変わってないのではないかとも思えるのである。幸せな環境であることは感謝するべきだが、親を好きになる必要も仲良くする必要もなく、適度な距離を保ちつつ、自分のやりたいことや、生きがいのために悪く言えば「利用」してうまく生きていく、したたかな親とのつきあい方も同時に提示しているのだ。

 

引っかかる点を挙げるとしたら、初がなんだかんだで加穂子に依存してしまってることで、方向性に悩んでたとはいえ、自分で決めて学んだ美術についての価値判断を加穂子に投げてしまっているのは意志薄弱すぎるのではないかと思う次第。

 

ドラマとしての評価は、遊川さんの前作、『はじめまして、愛しています。』もそうだったが、社会的なメッセージ性を前面に出し、ストレートに伝えたいことを伝えるといったことを意識しているような作りで、それはそれでありであるが、展開はご都合主義なところが目立ち、絵に描いたような大団円なので、物足りなく感じ、冷める部分もあるのが正直なところ。『カホコ』は、すごくキャラが立っていたので楽しめたが、今後もこのモードが続くのか注目したい。

 

過保護のカホコ Blu-ray BOX

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