さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

『正解するカド』感想 ※若干ネタバレあり

最後の展開に不満を漏らす人が散見されますが、私も同感で、野崎まどさんの小説は、『know』だけ読んでいるのですが、一部テーマが似通っている部分があって、それの悪い焼き直しという印象を持ってしまいます。

アスキーの野口光一Pのインタビューで、バトルものにならないと語っていたのにこれはどういうことでしょう(笑)

http://ascii.jp/elem/000/001/501/1501283/

まあ、バトル要素があるのは盛り上げ方としてありだと思いますし、ラストの逆転アイデアは面白いのですが、げんなりしたのはそれ以前の、沙羅花がヤハクィザシュニナを止めようとした理由が、感傷的、綺麗事すぎることで、恵まれて育って全く不幸を知らず、みんな善い人と思っているお嬢様か!とツッコミたくなりました。

テーマ的なものは、途中でほぼ提示されており、その部分を掘り下げていきヤハクィザシュニナが審判をくだしていくみたいな社会派SFを期待していたのですが、ザシュニナの欲望が前面に出て、真道ラブみたいなBL要素を押し出し、なんとも陳腐なダメなジャンプ漫画的な展開になってしまったのは残念です。

あと、花守も可哀想だけど、幸花が、そこに愛があったとはいえ、倒すために生まれ、親じゃない男性に育てられたというのは、引っかかる部分ではある。

2017年春アニメ ほぼ全作品1話レビュー

好み順に並んでいます。

正解するカド

小説家の野崎まど脚本のファーストコンタクトSF。アニメ的な釘宮ボイスの好奇心旺盛な科学者を登場させつつ、政府の対応を中心にきっちりエンタメとして魅せていて、面白い。プロデューサーのインタビューによると、予算の問題で、フルCGではなく、一部作画にしているようですが、動きの面でそこが功を奏してる部分もあるのではとも思った。

 

神撃のバハムート VIRGIN SOUL

相変わらず、作画と音響面が劇場級でクオリティが高い。脚本はこれが初アニメ作となる、大石静さんで、その作家性がアニメでどう活かされるのか楽しみでもあり、若干不安なところはあるけれど、1話の掴みはまずまず。

 

笑ゥせぇるすまんNEW

1989年 - 92年に放送されていたアニメは幼少期に少し見ていて、印象に残っており、伊東四朗のドラマも観た記憶が。
制作は初期作と同じシンエイ動画。「あにめのめ」枠としては、初の単独制作で、オリジナルではないが、この枠に期待していたものがやっときた感じで嬉しい。

 

Re:CREATORS

導入としては、割とベタな感じではあるが、タイトルから想起される通り、クリエーターについてのメタ言及的なストーリーになるのだろうか。

 

アトム ザ・ビギニング

ちょっと思っていたノリと違い、天馬博士がチャラい感じで、女性層を狙ったような二人のやり取りに戸惑った。画一的な群衆や、流れが唐突的な部分など、気になるところもあるが、今後の展開に期待できる掴みだった。

 

ID-0

作業において、完全に意識をIマシンに飛ばさないといけない必然性に疑問が。それなりに楽しいが、ノリとビジュアルが谷口監督の前作『アクティブレイド』と似たような感じなので、これから差別化をしていって欲しい。


サクラクエスト

まだ、どういう方向に行くかわからないけど、町おこしが成功するという点がゴールであれば、そこをご都合主義な展開で描いてはダメで、ちゃんと説得力のある町おこしのあり方を描くことが出きるかどうかがポイント。

 

ゼロから始める魔法の書

奇をてらわず、丁寧な作りの世界観のファンタジーで好感がもてる。平川哲生さんのTVシリーズ初監督作でもあるので期待したい。

 

GRANBLUE FANTASY The Animation

王道的なファンタジーRPG風の出だし。クオリティは高いが、ありきたりといえば、ありきたり。脚本は原作のCygamesが担当していて、初めて見る名前ばかりで、そこが吉と出るかどうか。

 

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?

最終的に悲しい結末になるんだろうなと予測がつく、出だし。ドラマの積み重ねをきちんとしていって欲しい。

 

王室教師ハイネ

女性向けだろうけど、教育論ものとしても観れる要素もあり、暫くは様子見。

 

覆面系ノイズ

感情のまま行動する天然系偏執型ヒロインは、ファンタジー要素のない少女漫画としてちょっと個性が強すぎる感じがするけど、話に勢いがあり演出も冴えている。ただ、新歓で合唱部が「きらきら星」を歌うのは『BanG Dream!』同様、違和感がw


ロクでなし魔術講師と禁忌教典

主人公が教師という立場以外は、よくあるラノベ的な作風であるが、テンポよく、キャラも立っていて、それなりに楽しめる。

 

月がきれい

初々しい甘酸っぱい恋愛要素だけだと、おっさんの自分が観ても仕方ないので、何か+αが欲しいところ。キャラデザインと色彩が、2011年放送の『放浪息子』と感触が似ているけど、スタッフは全然別だった。

 

クロックワーク・プラネット

歯車で構築された世界という点では目を引くが、地球滅亡の理由や、なぜ歯車なのかといった細かいところは目をつぶるべきなのだろうか。展開自体はよくあるもので、これからどう世界観を広げて楽しませてくれるのか。

 

つぐもも

少年漫画ものによくある、少年×人妖バトルものに割とストレートなエロ要素を加えた、どこか懐かしさ溢れる作風。多分、第一印象をはみ出ることのない展開を辿るであろう。
 

サクラダリセット

主要キャラが皆似たような印象で、全く中学生らしからぬ、持って回った話し方と、どこか達観したような価値観で構築されており、小説の文章だとあまり違和感がないかもしれないが、映像作品でこの台詞回しは普通に見ていて疲れる。演出でそこが補えていればいいけど、平凡で動きも少なく惹きつける力があるとはいえない。
キャラが、何でもお見通し的(能力の影響もあるだろうが)に他の人とは違う特別な感覚を持った人間みたいなことや、人の感情を台詞で説明してしまうというのもマイナス点で、キャラの性格や感情はストーリーの中で説得力のある形で提示してほしい。
設定自体はそれなりに魅力があるのにもったいないところが多い。

 

ひなこのーと

本が好きすぎて、破って食べるという破天荒美少女キャラがいてぶっ飛ぶが、4コマ原作の日常系萌えアニメは少し食傷気味。

 

カブキブ!

1話の段階では、まだ歌舞伎の魅力が伝わり切らず、よくある部活ものといった出だし。ちょっとクオリティの面が心配で、歌舞伎の描写がしょぼくならないといいが。

 

エロマンガ先生

レイアウトとかはいいけど、話のほうが、ちょっとロリコンの願望丸出しという感じで受け付けない部分も。

 

武装少女マキャヴェリズム

ぶっ飛んだ設定の学園格闘ものだけど、まあハーレムもの亜種といった感じで、1話の時点で惹きつけるものはない。

コードネームミラージュ Episode 01「始まル」 感想

公式HPのイントロダクションに、原作の広井王子氏のメッセージが書かれているのですが、ちょっと日本のドラマをちゃんと観てないのかなという感じを受け、大言壮語な作品にならないか不安を抱きつつ視聴。

牙狼」シリーズのプロデューサーでお馴染みの二宮氏のメッセージにあるように、海外ドラマを意識したような作りではあったが、主人公のサポート役のゲーム感覚で楽しむ女性ハッカーなど、いかにも日本的なキャラや演出で、ありがちな面も目立つ。アクションは良いけど、容赦なく犯罪者を殺していくのは日本が舞台になると違和感が出てしまうのは仕方がないか。

初回は作品の雰囲気を見せただけという感じで、ドラマ自体の展開が薄く、なんとも言えず。最後に敵の黒幕らしき人物があっさり身バレしていて、拍子抜けしたが、これからの攻防戦に期待したいところ。

秘密裏の特殊部隊という設定は、これから始まるフジテレビの金城一紀脚本作『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』と被っている部分もあり、比較しつつ楽しみたいと思います。

 

2017年冬季アニメ ランキング

1月放送開始アニメ、前期からの継続作品のうち、最後まで観た作品のランキング。『3月のライオン』は続編決定したので後回しに。

 

1位『昭和元禄落語心中

別途、詳細な感想を書く予定ですが、最終回を受けての簡単な感想を。

小夏に両親の死の真相を話さなかったり、信乃助の父親が誰かというのを曖昧にしたまま終わったり、人を見つめる視座は、最近ではドラマ『カルテット』に通じるところもあり、白黒つけずにグレーのまま通したのは素晴らしかった。


2位鬼平

様々な人間の業を浮き彫りにしたエピソードばかりで、スッキリするオチがほぼ無いというのが実に良かった。

話が繋がっているエピソードもあるが、1話完結もので、あまりじっくり描写して、


3位『亜人ちゃんは語りたい

詳細な感想はこちらを参照。

 

4位『ACCA13区監察課

これまでの夏目真悟監督の作品からすると、あまり相性が合ってない感じで、どういった経緯で監督になったか不思議に思う部分もあり、そつない優等生的な作りで物足りなさがある。

ドラマの部分は、隠れていた真実が明らかになった後は良かったけど、それまでが少し退屈であった。何より、パンが食べたくなる作品で、出てくるものが全ておいしそうなのは魅力の一つ。


5位『ALL OUT!!

「ここでは誰だって主役になれる」というキャッチフレーズが示す通り、作品内でも、主役である祇園の活躍だけ目立つのではなく、各キャラクターが大事にされていて、それぞれの個性が光っている。

トーリー的には練習試合の段階で終わり、大きな盛り上がりには欠けるものの、成長物語としての区切りはしっかりついていて、中途半端さはなく、良かった。

 

6位『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス 

最終回は今月末以降のようなので、後日感想を書きます。


7位『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』

出だしは変化球だったけど、終わり方は王道。熱い展開ではあるが、予想通りのありきたりさはあり、ユーリが都合の良い存在すぎる点も。

 

8位『霊剣山 叡智への資格

終始、王陸が痛い目をみながら、俺様理論で突っ走っていて、己の信念の貫き方は立派に思ったが、信徒のことをこき使っている面もあり、全ての行いを手放しで賞賛できないが、判断に迷う価値観も含め、新鮮さがあって楽しめた。

 

ランク外『幼女戦記

出だしの設定が殆ど活かされることがないまま終了し、肩すかし。
おっさん時代のエピソードを絡めると思ったら、全くないし、別の転生者も出てこない。

原作はどうなっているか知りませんが、これだったら転生という要素がいらず、最初から幼女(幼女である必然性もあまりないが)が主人公の架空戦記ものでいい。

『嘘なんてひとつもないの』 感想

BSプレミアム「プレミアムよるドラマ」枠で放送された『嘘なんてひとつもないの』のレビュー。

原案は、CM『au三太郎シリーズ』や『家庭教師のトライ』など、話題作を手がけるCMプランナー・篠原誠さん。

高校時代に長い付き合いの同級生による裏切りによって、対人恐怖症になり、7年間引きこもっている、パイロットが夢の山崎真(24)が主人公。核心に触れるとネタバレになるのですが、公式のあらすじで1話の展開がほぼ書かれていて、気になる方は、そちらを参照してください。

一言でいえば、『世には奇妙な物語』に出てくるような不思議系の話で、あまりリアリティはなくツッコミどころはあるが、毎回驚くような展開があり、次週も観たくなる仕掛けが見事な、ほろ苦い青春ストーリーです。

ここからは、なるべくネタバレを避けた詳しい感想。

 

真は、モラルに反する、人権侵害的なことをされるのだが、あんなことをされたら、余計に症状が悪化してしまいかねず、現実的に考えたら、今の時代、かなり問題になるような行いで、気持ちのいい展開ではない。そこを、リアリティを薄くすることで、なんちゃって感を出し和らげて、不快感をあまり与えない工夫がされており、そこは巧い。

石井杏奈演じるヒロインは、小悪魔的だか純粋さを持ち、真を裏切りつつ、陰で支える存在となるが、個人的には、こんな企画に乗っている時点でちょっと有り得ない感じで、本当はいい子みたいな描かれ方に釈然としないものがあり、好きにはなれなかった。

結末は、真にとって結果的には良かったといえる展開であるけれど、これだと裏のフィクサーの人がやったことも、結果的には間違いではなかったということになり、作品の視聴者が完全にフィクションとして受け止めて楽しむだけならいいんですが、現実に持ち出して、精神科医斎藤環さんが批判するような「タカ派的ひきこもり矯正施設」(以下、参考記事紹介)を容認することにも繋がりかねない面もある、やっかいさを孕む内容でもあるなと感じました。

TVタックルの引きこもり「引き出し業者」特集に非難轟々→精神科医の斎藤環氏がBPOに審査要請→施設に公開書簡→(略

「支援という名の暴力」に関わる記者会見 - Togetterまとめ 

【 亜人ちゃんは語りたい 】評 マイノリティへの合理的配慮のあり方、理想的な向き合い方

亜人ちゃんは語りたい」の世界は、怪物や妖怪が亜人(デミ)と呼ばれ、一般社会に自然に溶け込んでおり、社会的な弱者として亜人に対する「生活保障」が出ていたりするといった設定で、物語は、高校を舞台とした亜人に興味がある教師と、亜人の生徒との交流を中心に描いた学園ものだ。

出てくる亜人は、女性のみで、「ヴァンパイア」、「デュラハン」、「雪女」の生徒と、「サキュバス」の教師がメインキャラで、基本的には男性向け日常系の緩いコメディの体裁だが、根底としてはマイノリティに対する優しい視座があり、教師が生徒の亜人特有の悩みについての相談にのっていき、理解を深め、生徒たちの成長が描かれる青春ドラマである。

まず、合理的配慮とは何かを説明すると、障害者権利条約で『障害のある人が他の人同様の人権と基本的自由を享受できるように、物事の本質を変えてしまったり、多大な負担を強いたりしない限りにおいて、配慮や調整を行うことである』と定義されているもので、具体的な解説は以下の記事を読んで頂きたく思います。

 

障害者差別解消法、社会に求められる“合理的配慮”とは? / 大野更紗×近藤武夫×荻上チキ | SYNODOS -シノドス- 

作品における、合理的配慮のケースとして、一番わかりやすいのは、頭部と胴体が分離している「デュラハン」の話で、デュラハンは常に頭を抱えていないといけないことから、教師の高橋鉄男が、学校指定の手提げカバンでは不便だから、リュックで通学することを許可してほしいと校長にお願いするエピソードで、これは正に合理的配慮そのものだ。

また、高橋鉄男の亜人への向き合い方が、マイノリティに対しての向き合い方に通じるもので、それを現す重要な代表的なセリフを引用する。

「物の見方は一方向ではダメだ。双方向でしかるべきだ。亜人の特性だけ見ていると、個性を見失う。人間性だけ見ていると、性質に起因する特有の悩みの原因にたどり着けない。どちらも大切だ。バランスが大事なんだ。」


これと関連して、亜人たちに対してどう接すればいいか悩む同級生たちの会話も重要なので引用。

亜人の事って同じ人間だと思っていいのかな?」

「俺たちと違うっていうのか?そりゃ、差別ってもんだろ?」

「そうかな?さっき亜人は普通の人とほとんど変わらないって言ってたけど、それはつまり違うところはあるってことでしょ。そこを見ないで、同じ人間だって、それこそ差別なんじゃないかな?同じと思ってる人間に特有の悩みを相談したいと思う?」

この会話は、教頭が高橋先生に「あなたに頼りすぎているのは、あの生徒たちにとってよくない。様々な人との交流によって悩みを解決していく方が良いのではないか?」と進言したのを一人の生徒が聞いて、なぜ自分たちに相談してくれないのかというのを話し合ったもので、これは、しっかり亜人固有の特性を理解し、合理的な配慮を考えたうえで対等に付き合うことの大切さを説いており、作品全体を通じてインクルーシブ教育(詳しくは記事参照)の理想的なあり方が示されています。

 

この作品を観て、現実のマイノリティについて思いを巡らし、理解しようとする人が増えることを願いたいですが、感想を眺めてみると単にキャラ萌え青春アニメとしか捉えていない感想も目立ち、現実のマイノリティ理解の深化の難しさも垣間見ました。