作り手の驕りと逃げが目立った『Re:CREATORS( レクリエイターズ )』
まず感想を簡潔に言うと、思い入れもないキャラたちによる微妙なシナリオのスーパーロボット大戦というのが正直なところ。
特番が3話入ったのは、あおきえい監督のインタビューで語られていますが、要は公開されている広江礼威氏の原作シナリオ通りに作ったら枠が余ったので特番で埋めましたってことだと思うのですが、余裕があるなら何故もっと各々の作品内エピソードを描かないのか疑問。承認力のある人気作を説得的に描かなければならないといった課題から逃げて、雰囲気だけ人気があるように見せているとしか感じず、思い入れを持てない要因となっている。特にアルタイルのバックボーンが描かれていないことは致命的で、21話でセツナが語った『あなたは同時に弱き者の王様。弱き者の騎士。そうやってあなたを見る人がたくさんいたのです。』『私みたいなどこかで折れてしまいそうな人達にこの世界でもう一歩だけ進む力をあなたが与えてくれるんです』が、唐突すぎて、そんなバックボーンがあったの!?とキョトンとするしかありませんでした。
そもそもアルタイルについて、ソシャゲのキャラがある程度人気になるのはわかるけど、その改変二次創作キャラ動画が300万再生超え、その派生動画も人気になるというのが非現実的に感じ、そんなに人気なのに創造主の人たちは全く知らないというのはどうなんだとも思う。あと、ホロプシコンの能力で最後に出された、設定をリセットするとかなかったものにするというのは、そんな設定の二次創作を作った人がいるということで、ずいぶん都合がいいなと、苦笑してしまった。
結局、世界崩壊のプロセスは、メテオラが解説した通りのもので正解なのかどうか、誰も世界の修復力の作用によって弾かれず、現実に対して影響もないままラストバトルを迎えたので、よくわからずのまま。承認力でキャラを現界させたりしても何も起こらないんだから、見立ては完全に間違っているんじゃないかと思ってしまう(笑)
一番首を傾げたのは、チャンバーフェスの観客の反応で、最初に戦った時にセレジアがまみかに対して言った「あなたの物語はみんな物分かりが良かったのね」状態になっており、おかしな点を箇条書きにすると、
- 前日譚である程度辻褄を合わせているだろうとはいえ、展開や会話についていけてるのが不思議
- ひかゆが翔を倒す展開や、アルタイルが次々と主役キャラを倒して、各キャラのファンは何とも思わないのか
- ネタバレに対して笑って突っ込む人ばかりなのは現実的でない
- 主役勢より、アルタイルが共感されて承認力を得た転換点が謎
といった具合で、画面に否定的なコメントも映しているとはいえ、基本的には承認力に影響がないという従順ぶり。承認力の活かし方として、アルタイルが承認力を奪うということ以前に、承認力によって展開が左右されて作者勢があわててシナリオをリアルタイムで修正し、指示したりとかいった活かし方があったのではないか。
テーマである、クリエイターの業や想い、作品により受け手側が新たな視点を得たり刺激を受け、それがまた別の創作にも繋がるようなミメーシスを起こしたりする物語自体の偉大さを謳っていることは良いが、ある種、自明であることをそのまま出してしまっていることの恥ずかしさがあり、狡い感じがしてしまいます。一方で、セツナが自殺した動機である炎上事件で、受け手の身勝手さ、気楽さも描いているが、作り手側は神聖化されていてバランスが悪い。ぞんざいな仕事をする創造主を出したり、現界したキャラがエロ同人誌を読んでしまい、ショックを受けてアルタイル側に寝返るような展開などあったらよかった。
ストーリー以外の部分では、セレジアが承認力により新たな力を得るところ以外のバトルがアルタイル無双すぎて、技を次々と繰り出すのがだらだら続く単調なものになってしまっていたことが気になった。あとは前作も含み、フィルムとして熱がなく、脚本マターで監督のこれがやりたいという作家性が薄いのは残念で、自主会社のオリジナルなのだから、次作はそういう面を出して欲しいと思います。
Re:CREATORS Original Soundtrack
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『お母さん、娘をやめていいですか?』へのカウンターとしての『過保護のカホコ』
『お母さん、娘をやめていいですか?』(以下、オカムス表記)は、今年NHKで放送された井上由美子脚本のドラマで、娘を支配し、依存する毒親を描き話題となった作品で、『過保護のカホコ』(以下、カホコ)と共通点は多い。しかし、描かれ方は正反対的で『オカムス』が狂気を帯びた深刻なサスペンスである一方、『カホコ』はコメディ調のホームドラマである。
加穂子の家族や親族の家庭のゴタゴタは、幼少期に母親が出ていった麦野初からしたら「心温まるエピソード」であるとして、あくまで恵まれた家庭として位置付けており、これが、遊川さんが込めた願いの核であり、そういったメッセージはドラマの中で殆ど台詞で説明されている。人間は皆、欠点があるという前提に立ち、不幸にならない、しないために何ができるのか考え、心のドアを開ける鍵となる存在の必要性を説いている。最初は過保護であることが麦野初を通して否定的に語られていたが、最終的にはその初も加穂子に保護をされて居場所を見つけており、過保護で何が悪いのかといった結論に至るのだ。
一方、このドラマを、家族愛、家族は仲良くしなければいけないといった価値観の押しつけと感じ受け付けなかったり、呪いと受け取るような方もいると思われるが、糸や教子おばさんのことを見ると、そういった面を相殺する役割を担っていると思われる。糸は、親のことを退屈な人間と思っており、それは改心した後でも恐らく変わっていない。「親や兄弟なんてどうでもいい。血縁関係ってだけでなぜ愛さなければいけないのか」「自分は愛のない人間」と語っていた教子おばさんは、最終的に愛に目覚めたように見える。しかし、「自分が傷ついたり失敗したりしてもいつでも帰ってこれる場所があることがどれだけ幸せなことか私が一番よくわかってる」というのは本心としても、フリースクールを作ろうと考えたのは、高齢者向けのパソコン教室をやろうとしたノリと本質的には変わってないのではないかとも思えるのである。幸せな環境であることは感謝するべきだが、親を好きになる必要も仲良くする必要もなく、適度な距離を保ちつつ、自分のやりたいことや、生きがいのために悪く言えば「利用」してうまく生きていく、したたかな親とのつきあい方も同時に提示しているのだ。
引っかかる点を挙げるとしたら、初がなんだかんだで加穂子に依存してしまってることで、方向性に悩んでたとはいえ、自分で決めて学んだ美術についての価値判断を加穂子に投げてしまっているのは意志薄弱すぎるのではないかと思う次第。
ドラマとしての評価は、遊川さんの前作、『はじめまして、愛しています。』もそうだったが、社会的なメッセージ性を前面に出し、ストレートに伝えたいことを伝えるといったことを意識しているような作りで、それはそれでありであるが、展開はご都合主義なところが目立ち、絵に描いたような大団円なので、物足りなく感じ、冷める部分もあるのが正直なところ。『カホコ』は、すごくキャラが立っていたので楽しめたが、今後もこのモードが続くのか注目したい。
2017年10月放送開始ドラマ 注目作6選
前期はお休みしてしまいましたが、また始めます。
・奥様は、取り扱い注意
【脚本】金城一紀
【演出】猪股隆一
これまでの金城さんの作品とは毛色が違う、ホームドラマとアクションを組み合わせたドラマとなるようで楽しみです。
・刑事ゆがみ
http://www.fujitv.co.jp/yugami/index.html
【脚本】倉光泰子、大北はるか、藤井清美
【演出】 西谷弘、加藤裕将、宮木正悟
主演2人の組み合わせも気になりますが、演出陣は賞も取ったりしているフジテレビドラマのホープが集まっているのも注目。
・明日の約束
【出演】井上真央、及川光博、工藤阿須加、白洲迅、新川優愛、羽場裕一、手塚理美、仲間由紀恵
ミステリーのようですが、スクールカウンセラーが主人公というのはドラマで初めてだと思うので、その点を注目しています。
・Re:Mind
http://www.tv-tokyo.co.jp/remind/
【企画・原作】秋元康
【脚本】室岡ヨシミコ、田中洋史、保坂大輔
【演出】内片輝、石田雄介、頃安祐良
テレ東とnetfilixの共同製作ドラマ3弾。ひらがなけやきの存在をこれで初めて知ったのですが、密室サスペンスもので、全世界配信も狙う意気込みに期待したいです。
・民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜
http://www.fujitv.co.jp/minshuunoteki/index.html
【脚本】黒沢久子
【演出】金井紘、石井祐介
【出演】篠原涼子、高橋一生、古田新太、前田敦子、千葉雄大、余貴美子、大澄賢也、田中圭、石田ゆり子
主婦が市議会議員になって奮闘するドラマ。脚本の黒沢久子さんは若松孝二監督「キャタピラー」などの重い題材の作品から、最近ではウルトラマンの脚本も書いていて、これが連続ドラマ脚本デビューとなり注目しています。
・監獄のお姫さま
http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/
【脚本】宮藤官九郎
【演出】金子文紀、福田亮介、坪井敏雄、渡瀬暁彦
【出演】小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介、夏帆、塚本高史、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂
まだちょっとストーリーがよくわかりませんが、ここ最近はプロデューサーとしてもヒット作を飛ばしている金子文紀さんの作品で話題性になることは間違いなし。
『正解するカド』感想 ※若干ネタバレあり
最後の展開に不満を漏らす人が散見されますが、私も同感で、野崎まどさんの小説は、『know』だけ読んでいるのですが、一部テーマが似通っている部分があって、それの悪い焼き直しという印象を持ってしまいます。
アスキーの野口光一Pのインタビューで、バトルものにならないと語っていたのにこれはどういうことでしょう(笑)
http://ascii.jp/elem/000/001/501/1501283/
まあ、バトル要素があるのは盛り上げ方としてありだと思いますし、ラストの逆転アイデアは面白いのですが、げんなりしたのはそれ以前の、沙羅花がヤハクィザシュニナを止めようとした理由が、感傷的、綺麗事すぎることで、恵まれて育って全く不幸を知らず、みんな善い人と思っているお嬢様か!とツッコミたくなりました。
テーマ的なものは、途中でほぼ提示されており、その部分を掘り下げていきヤハクィザシュニナが審判をくだしていくみたいな社会派SFを期待していたのですが、ザシュニナの欲望が前面に出て、真道ラブみたいなBL要素を押し出し、なんとも陳腐なダメなジャンプ漫画的な展開になってしまったのは残念です。
あと、花守も可哀想だけど、幸花が、そこに愛があったとはいえ、倒すために生まれ、親じゃない男性に育てられたというのは、引っかかる部分ではある。
2017年春アニメ ほぼ全作品1話レビュー
好み順に並んでいます。
『正解するカド』
小説家の野崎まど脚本のファーストコンタクトSF。アニメ的な釘宮ボイスの好奇心旺盛な科学者を登場させつつ、政府の対応を中心にきっちりエンタメとして魅せていて、面白い。プロデューサーのインタビューによると、予算の問題で、フルCGではなく、一部作画にしているようですが、動きの面でそこが功を奏してる部分もあるのではとも思った。
『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』
相変わらず、作画と音響面が劇場級でクオリティが高い。脚本はこれが初アニメ作となる、大石静さんで、その作家性がアニメでどう活かされるのか楽しみでもあり、若干不安なところはあるけれど、1話の掴みはまずまず。
『笑ゥせぇるすまんNEW』
1989年 - 92年に放送されていたアニメは幼少期に少し見ていて、印象に残っており、伊東四朗のドラマも観た記憶が。
制作は初期作と同じシンエイ動画。「あにめのめ」枠としては、初の単独制作で、オリジナルではないが、この枠に期待していたものがやっときた感じで嬉しい。
『Re:CREATORS』
導入としては、割とベタな感じではあるが、タイトルから想起される通り、クリエーターについてのメタ言及的なストーリーになるのだろうか。
『アトム ザ・ビギニング』
ちょっと思っていたノリと違い、天馬博士がチャラい感じで、女性層を狙ったような二人のやり取りに戸惑った。画一的な群衆や、流れが唐突的な部分など、気になるところもあるが、今後の展開に期待できる掴みだった。
『ID-0』
作業において、完全に意識をIマシンに飛ばさないといけない必然性に疑問が。それなりに楽しいが、ノリとビジュアルが谷口監督の前作『アクティブレイド』と似たような感じなので、これから差別化をしていって欲しい。
『サクラクエスト』
まだ、どういう方向に行くかわからないけど、町おこしが成功するという点がゴールであれば、そこをご都合主義な展開で描いてはダメで、ちゃんと説得力のある町おこしのあり方を描くことが出きるかどうかがポイント。
『ゼロから始める魔法の書』
奇をてらわず、丁寧な作りの世界観のファンタジーで好感がもてる。平川哲生さんのTVシリーズ初監督作でもあるので期待したい。
『GRANBLUE FANTASY The Animation』
王道的なファンタジーRPG風の出だし。クオリティは高いが、ありきたりといえば、ありきたり。脚本は原作のCygamesが担当していて、初めて見る名前ばかりで、そこが吉と出るかどうか。
『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』
最終的に悲しい結末になるんだろうなと予測がつく、出だし。ドラマの積み重ねをきちんとしていって欲しい。
『王室教師ハイネ』
女性向けだろうけど、教育論ものとしても観れる要素もあり、暫くは様子見。
『覆面系ノイズ』
感情のまま行動する天然系偏執型ヒロインは、ファンタジー要素のない少女漫画としてちょっと個性が強すぎる感じがするけど、話に勢いがあり演出も冴えている。ただ、新歓で合唱部が「きらきら星」を歌うのは『BanG Dream!』同様、違和感がw
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』
主人公が教師という立場以外は、よくあるラノベ的な作風であるが、テンポよく、キャラも立っていて、それなりに楽しめる。
『月がきれい』
初々しい甘酸っぱい恋愛要素だけだと、おっさんの自分が観ても仕方ないので、何か+αが欲しいところ。キャラデザインと色彩が、2011年放送の『放浪息子』と感触が似ているけど、スタッフは全然別だった。
『クロックワーク・プラネット』
歯車で構築された世界という点では目を引くが、地球滅亡の理由や、なぜ歯車なのかといった細かいところは目をつぶるべきなのだろうか。展開自体はよくあるもので、これからどう世界観を広げて楽しませてくれるのか。
『つぐもも』
少年漫画ものによくある、少年×人妖バトルものに割とストレートなエロ要素を加えた、どこか懐かしさ溢れる作風。多分、第一印象をはみ出ることのない展開を辿るであろう。
『サクラダリセット』
主要キャラが皆似たような印象で、全く中学生らしからぬ、持って回った話し方と、どこか達観したような価値観で構築されており、小説の文章だとあまり違和感がないかもしれないが、映像作品でこの台詞回しは普通に見ていて疲れる。演出でそこが補えていればいいけど、平凡で動きも少なく惹きつける力があるとはいえない。
キャラが、何でもお見通し的(能力の影響もあるだろうが)に他の人とは違う特別な感覚を持った人間みたいなことや、人の感情を台詞で説明してしまうというのもマイナス点で、キャラの性格や感情はストーリーの中で説得力のある形で提示してほしい。
設定自体はそれなりに魅力があるのにもったいないところが多い。
『ひなこのーと』
本が好きすぎて、破って食べるという破天荒美少女キャラがいてぶっ飛ぶが、4コマ原作の日常系萌えアニメは少し食傷気味。
『カブキブ!』
1話の段階では、まだ歌舞伎の魅力が伝わり切らず、よくある部活ものといった出だし。ちょっとクオリティの面が心配で、歌舞伎の描写がしょぼくならないといいが。
『エロマンガ先生』
レイアウトとかはいいけど、話のほうが、ちょっとロリコンの願望丸出しという感じで受け付けない部分も。
『武装少女マキャヴェリズム』
ぶっ飛んだ設定の学園格闘ものだけど、まあハーレムもの亜種といった感じで、1話の時点で惹きつけるものはない。