2018年春アニメ視聴継続作ランキング
2018年4月放送開始のアニメの中で1~2話段階で視聴継続予定の作品を好み順にランキング。
1位『メガロボクス』
「明日のジョー」連載開始50周年記念作品。
設定やセリフに明日のジョーの要素をうまく生かしており、意欲を感じる出だし。ただ、今のところ試合についてはボクシングと同様という感じで、体につけているギアを生かした闘いを観たいです。
作画面の解説として氷川竜介さんのコラムは必読。今回が初監督となる森山洋さんのインタビューも読むべし。
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2位『ゴールデンカムイ』
「ゴールデンカムイ」特集 野田サトル×町山智浩対談 (1/3) - コミックナタリー 特集・インタビュー
グロ描写が抑えられていたり、少し作画の迫力が足りない部分を感じるけど、概ね満足。
3位『シュタインズ・ゲート ゼロ』
再放送の改変最終回を見ていなかったのですが、少し予習した程度で問題なく楽しめました。監督が前作に参加していない川村賢一さんに変わりましたが、そこも問題なしの出来。
4位『ヒナまつり』
くすりと笑える程度だけど、個人的には久々にアニメのギャグ作品で普通に楽しめた。割ときちんとしたドラマのなかでの小ネタはさみで面白く見せようという点では実写作品に近い作りなのがいいのかな。
5位『ひそねとまそたん』
小林寛監督と岡田麿里脚本の「キズナイーバー」は全然ダメだったので、そこに樋口真嗣さんが加わったからといってどうなんだろうと大して期待していなかったんですが、1話の段階では好感触。
何より、青木俊直さん原案のキャラデザが秀逸。キャラデザに合わせて作風もゆるさがあり、そのおかげもあり岡田脚本おなじみのキャラのきつさや、アラが気にならない構成になっており受け入れやすい。
ひそねが何故航空自衛隊を目指したのか、その裏にあるこの世界の情勢がどんなものなのか、その先における展開が肝になるけど、あまり変にシリアス方向にはいって欲しくない感じです。
6位『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』
旧作と大きく構成が変わっておらず、TVでは12話までということで、旧作ファンは改めて見る必要性はあまりないかもしれませんが、今の時代に放送される意義はあると思うので、一応。
7位『Caligula ‐カリギュラ‐』
ペルソナ1、2のシナリオを書いた里見直さんシナリオの2016年発売ゲームのアニメ化。
主人公の高校生が心理学を独学で学んでいて、その知識を会話でまじめにひけらかすなどクセが強いキャラクターや、展開も興味深く、今季のダークホースとなるか期待。
8位『ルパン三世 PART5』
今のところ、少しよくできたTVスペシャルレベルの面白さ。単発エピソードで大河内さん以外の脚本家のそれぞれの好きなルパンを元にした話が入ったりするようなので、それは楽しみにしています。
9位『実験品家族 -クリーチャーズ・ファミリー・デイズ-』
香港の漫画家の作品で、中国の大火鸟动画(大火鳥アニメーション)制作。
末っ子のタニス以外、マッドサイエンティストの両親に改造されて半クリーチャー化した兄一人と姉たち三人の社会生活を描く日常もの。クオリティが高く、美術や料理作画も気合いが入っており、目を見張る出来。展開によっては名作になる可能性も。
10位『LOST SONG』
歌に特別な力を持つ二人のヒロインが政治的な陰謀に巻き込まれるファンタジー。なかなか残酷な展開が待っていそうな感じがしますが、まあ王道的なストーリーでやや古臭い。
11位『Cutie Honey Universe』
そこそこ楽しめるものの、想定の範囲内の感じで、今さらリメイクする必要性も感じず。
作品とは関係ありませんが、横山彰利監督がtwitterでDAPPI、有本香、石平太郎をフォローしており、自身が好きなウルトラマンから何を学んだらこうなるのかと不信感しかありません。
2018年冬アニメ&ドラマ ベスト10
去年、映画雑誌の映画芸術が映画ランキングからアニメ作品を外すという騒動がありましたが、そういえばテレビ作品も別々にする必要もないなと思い至ったので一緒にランキング。アニメの方は前期からの2クール作品とNETFLIXオリジナル作を含みます。
1位「隣の家族は青く見える」
ドラマとしては少し好みと離れますが、テーマとメッセージ性が全カップル(同性愛者含む)必見の内容で、殆ど説教臭くなく、多様性のあり方や、パートナーとの向き合い方の理想的な姿を示しており、様々な配慮をしつつご都合主義さをあまり感じさせないきめ細かい中谷まゆみさんの脚本が素晴らしかったです。
2位「命売ります」
予想外の掘り出しもので、娯楽性も高く、死を通して生を考えるという文学性も兼ね備えたエンタメ作品。個人的なお気に入りは、オリジナルのブラック企業の回とマジシャンの回。
3位「DEVILMAN crybaby」
既に語り尽くされているという感じなので、細かい感想は他の方のを参照してください(笑)ただ、作中で作品としてデビルマンが存在しているという設定は色々齟齬が出てきちゃうので不必要と思いました。
4位「anone」
まだ咀嚼しきれていない部分もあり、感想は別途書く予定。坂元裕二さんがInstagramで、しばらくドラマを休業すると発表され、ああ来年は坂元流会話劇に酔いしれられないのかとがっかりしましたが、映画脚本もやったりするようなので楽しみにしていまふ。
5位「3月のライオン」
原作を生かしつつ、シャフトの集大成といった演出を駆使し、彩りを添えてより魅力的にしており見応えがありました。またシャフトにはこういった青春ドラマを手がけてほしいですね。
6位「女子的生活」
トランスジェンダーの主人公の日常を親友の後藤との共同生活を中心コミカル描きつつ、マイノリティに対する負のまなざしと立ち向かいつつ前向きに生きる一人の人間の成長を描いた佳作。高校の同級生だったミニーさんの処世術は、あれでいいのかと思いつつ色々共同深いキャラクターでした。
7位「アンナチュラル」
1話でテレ朝の「科捜研の女」や「臨場」にネタ言及していましたが、それらに勝るとも劣らない、非常に間口が広く訴える力が強い社会派法医学ミステリーでした。中堂のキャラが主役を喰うほどのクセの強さで魅了してくれました。ただ、1話から伏線を出していた核のストーリーの最終2話の犯人像が現実離れして、分かり易いストーリー性が仇となってしまって、よくあるダメな日本的ドラマの構成になっていると個人的には感じたので7位にしました。
8位「弟の夫」
同性愛、偏見について考えるための教科書的なホームドラマで素晴らしいのですが、同様に同性愛の困難さを描いた「隣の家族は青く見える」に比べ、やや踏み込みが浅く、ピュアすぎる面がありドラマ的に物足りず。同性愛のテーマとは別に、離婚したけど、そのおかげもあって関係性が改善し、一夜を共にしてしまう弥一と元妻とのあり方も一つの多様性で、そういった部分もよかった。
9位「魔法使いの嫁」
少女を買って結婚しようと迫る化け物になんだかんだで惚れるというストーリーはやはり少し抵抗はあるものの、智世は芯があって、エリアスの問題行動ははっきり批判し、最終的にしっかり話し合って物事を決めようという結末はよく、ファンタジーとしても魅力的な部分が多かった。演出がよく、特になかむらたかしさんが、04年の「ファンタジックチルドレン」以来のTVアニメ参加したことはサプライズで非常に嬉しかった。
10位「牙狼<GARO> -VANISHING LINE-」
普通にエンタメとして楽しめたものの、ストーリー自体は特筆すべきところはなく凡庸な感じなんですが、朴性厚監督のこだわりのアクション作画+牙狼シリーズ独特の3DCGアクションは見所沢山でそれだけでも見る価値はあると思わせる。特に8話と23話のキングとの戦闘は素晴らしく、物凄い労力をかけて作ったことが分かる。
河森正治総監督作『重神機パンドーラ』先行配信1話 感想
NETFLIXの先行配信で視聴。
最近の河森正治さんの作品は個人的にピンとくるものがなく、『アクエリオンEVOL』以降ちゃんと最後まで見た作品はないという感じなんで期待値は低め。
日中共同制作で舞台のモデルとなっているのが中国の重慶と、世界展開に力を入れているようです。以下、参照。
http://j.people.com.cn/n3/2018/0328/c94473-9442590.html
次世代エネルギーの暴走事故で進化フィールドというものが発生し、多くの動植物、AIまでもが特殊な進化を遂げ、生物と機械の境界線すら曖昧になり、誕生した特異進化生物が人類を脅かすという設定。ここで疑問に思うのがAIに影響でるのは謎で、人間には何の影響も及ぼさなかったのか?ということ。今後、敵として人間が特異進化したような存在が出てくるのか分かりませんが、出てきたところで、ああやっぱりという感じになってしまうのは目に見えており、不安です。
主人公は事故を引き起こした中心人物の研究者で、追放されて辺地で妹と暮らしているのですが、本当の妹ではなく、家族契約を結んで妹として振る舞っているという設定で、その事情がどう生かされるのかがポイント。
バトルがメインであまりキャラに焦点が当てられず、新鮮味や印象に残る要素が殆どなく、また途中で視聴を切ってしまうかもという予感。
スタッフで見る、チェックすべき2018年春ドラマ
2018年4月放送開始のドラマの中でスタッフ的に良作になるだろうと予想される作品をピックアップしました。
「宮本から君へ」
http://www.tv-tokyo.co.jp/miyamoto_kimi/
監督・脚本:真利子哲也
出演:池松壮亮、柄本時生、星田英利、華村あすか、新名基浩、古舘寛治
1992年に小学館漫画賞を受賞した新井英樹原作のドラマ化。監督は映画『ディストラクション・ベイビーズ』で商業映画デビューし、高い評価を受けた新鋭の監督。
「コンフィデンスマンJP」
http://www.fujitv.co.jp/confidenceman_jp/index.html
脚本:古沢良太
演出:田中亮、金井紘
フジテレビ作品では『リーガル・ハイ』、『
デート〜恋とはどんなものかしら〜』でおなじみの古沢良太脚本作。過去2作と演出スタッフは違いますが、価値観を揺さぶるようなハイテンションな楽しい作品をまた見せてくれるのか期待。
「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」
http://www.nhk.or.jp/dodra/yakeben/
作:浜田秀哉
演出:柳川強、佐々木善春、渡辺哲也
主演:神木隆之介
『ラストホープ』で第2回市川森一脚本賞を受賞した浜田秀哉脚本。演出チーフの柳川さんは、NHKスペシャルのドラマ『鬼太郎が見た玉砕』、『最後の戦犯』などが代表作。
現実に文科省が導入を進めているスクールロイヤーという学内弁護士が主人公で、新しい形の学園ドラマとしても注目です。
「未解決の女 警視庁文書捜査官」
http://www.tv-asahi.co.jp/mikaiketsu/
脚本:大森美香
演出:田村直己、樹下直美
主演:波瑠、鈴木京香
最近はNHKの仕事ばかりしていた、『あさが来た』の大森美香さんの久々の民放作。新作がテレ朝ミステリーとは意外ですが、文書を解析して事件を解決するという一見地味な題材をどう面白く見せてくれるのか期待。
Netflixオリジナルアニメ『A.I.C.O. Incarnation』 全話視聴感想
Netflixで9日に配信開始した『 A.I.C.O. Incarnation 』を視聴。
監督は『翠星のガルガンティア』、『正解するカド』の村田和也氏で、全話絵コンテをやっています。シリーズ構成は『コメット・ルシファー 』の野村祐一。この二人は『交響詩篇エウレカセブン』で仕事をしていて、評価の高い「バレエ・メカニック」回を担当しています。
世界観としては未来都市で、研究されていた人工生体が暴走し、マターと呼ばれる怪物化し猛威を振るう日本が舞台のバイオSFアクション。
『B:the Beginning』が20~30代向けとしたら、この作品はティーン向けといった感じで、設定は良いのですが、ドラマ性は薄く、全体的にチープな展開で、キャラもあまり魅力的ではなく、余計な要素を入れすぎているといった印象。物語の核心に迫る後半はそれなりに盛り上がるんですが、そこに至るまでが長く、映画で1時間くらいにくる見せ場に2時間かけてしまっているといった感じで、『B:the Beginning』と同じ問題点があると思います。TVシリーズではないのだから、『カウボーイビパップ』などのような単発エピソード型で積み重ねる形式じゃない限り、全12話とかに拘る必要はなく、もっと柔軟な作り方をして貰いたいです。
アクションの方も単調で、基本的に触手、人型のマターがどんどん出てきて応戦するの繰り返しで、大して代わり映えがしないのが難点。ラスボス的な存在との戦闘も緊迫感に欠け、もっと恐怖心を煽ったりするような敵の見せ方に工夫が欲しいところ。
Netflixオリジナルアニメ第一弾の湯浅政明監督『DEVILMAN crybaby』は、監督の作家性とアニメーター含む個々のスタッフの作家性が競合し、熱のある面白いフィルムになっていましたが、あとの2作はそういう作家性が前面に出ておらず、既存の枠内からはみ出さない作りで物足りず、もっと挑戦的な作品が見たいです。今までボンズに関わったスタッフで言えば、松本理恵監督や宮地昌幸監督の作品を期待します。
Netflixオリジナルアニメ『B:the Beginning』 全話視聴感想
Netflixで2日に配信開始した『B:the Beginning』を視聴。
アニメーター・キャラクターデザイナーとして活躍している中澤一登さんと、代表作として『キルミーベイベー』、『ダンまち』を監督した山川吉樹さんとの共同監督作品。中澤さんは原作も担当しており、長編シリーズものは初監督。
特殊犯罪捜査課のキースと異形に変身する能力を持つ黒羽(こくう)という少年のW主人公体制で、ジャンルとしては、クライムサスペンスとダークファンタジーが融合した謎解きしつつ話が進んでゆく展開。どちらかといえばメインはキース周りの話で、ファンタジー要素を除いても成立するようなストーリーでもあります。
ファンタジー部分の設定以外は、正直どこかどこかで見たことのあるプロットの組み合わせという感じで、国内外の刑事、サスペンスものを見慣れた人には新鮮さはなく、それらの良質の作品と比べると見劣りする内容と思います。わかりやすいところで言えば、キースのキャラや文字演出なんかは『SHERLOCK(シャーロック)』を意識している感じ満々。
全12話なんですが、ほぼ一本の事件を延々と追うような形になっていて、海外ドラマのスピード感と比べると展開が遅く感じ、密度が薄く冗長になってしまっており、うまく削って2時間弱ぐらいの映画サイズに詰めればもっと体感的に面白さが持続するようになって良かったのではと思います。
脚本の石田勝也さんは、制作進行出身で、脚本家としては過去に単発で2本しかやっておらず、なぜこの方がシリーズ構成に抜擢されたのか謎なんですが、上記の欠点を除けば、サバサバした性格のヒロイン的な女性刑事のリリィのキャラ造詣やコメディ的要素などよい部分もありました。
あとは、アニメーションとして中澤監督こだわりのアクションは見応えがありました。配信ものだとコマ送りして見れないのが残念。
制作のProduction I.GはNetfilixと提携しており、今後も次々と作品が出てくると思いますが、個人的にはテレビシリーズ『攻殻機動隊』で脚本家デビューし、現在はプロデューサー業をしている櫻井圭記さんが関わった作品が見たいなと思います。
若者自ら「やりがい搾取」に陥る構造を見事に描いた『命売ります』5話
脚本:神田優 演出:石井満梨奈
原作にないオリジナルな話で、ブラック企業が舞台。ブラックなIT企業で働き、衝動でビルから飛び降りるも助かった、プロジェクトリーダーの鎌田が、ブラック企業であることを世間に知らしめるため、過労死で死んでくれと羽仁男に依頼~といったあらすじ。
ブラック企業を扱ったドラマは数あり、つい最近も野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』でも従業員が立ち上がる姿が感動的に描かれていましたが、この話は単純に搾取する経営者VS社員といった構図ではなく、社員自らが仕事を生きがいとしているが故にブラックな働き方を肯定、実践してしまい、そこからはみ出すものを軽蔑しだすといった、気づかず「やりがい搾取」されている若者が描かれています。これは、少し前に話題になった居酒屋甲子園あたりを参考にしているのではないかと思いますが、こういったある種のねじれを描いたドラマは自分が知る中では初めてです。
色々とひねりの利いた、生きがいや働きがいがもたらす落とし穴を描き、ホラーチックなオチも秀逸な脚本プラス演出も良く、石井満梨奈さんは、これまでプロデューサー業をしており、今回が初演出のようなんですが、朝礼で復唱させる社訓の『 死んでも諦めるな! 死んでも休むな! 死んでも戦え!』にダンスめいた身振りをつけて繰り返し見せる、コミカルに滑稽さを出す演出など面白く、今後の活躍を期待させます。