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さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

育児はロックだ! ドラマ『奇跡の人』 感想

「ダメ男が元ヤン女に恋をした。その女には目と耳に障害のある娘がいた。そして、ダメ男は考える。オレがサリバン先生になってやる。そして彼女に世界を教えてやるんだ!」
 
これは企画書の初めの3行に書かれていたドラマの概要だそうで、面白いドラマは3行で言い表せると、公式HPにある脚本・岡田×河野P×後藤Pスペシャル鼎談で語られています。
 
 
登場人物の紹介はこちら
 
 
筋としては、ロックバカな一択の一途な思いや行動が周りを巻き込み、それぞれ成長していくという物語。主人公に優しい、少しファンタジックな世界観で、一択が住んでいるアパートの大家や住人らが一択や花をサポートしていきますが、脚本の岡田惠和さんの最近の作品と同様、一方で残酷な現実が同居しているのが特徴で、きれいごとだけではないシビアな面も同時に描かれており、そのバランスが絶妙であります。
 
この作品において、特に重要で、感情がシンクロしたキャラは、官僚を目指していて、福祉行政に詳しい福地こと「フクシくん」で、思いや感情だけで突っ走る一択に対して、イライラしつつ、現実的なアドバイスをするのですが、ドラマ全体をおとぎ話にしない役割も担っています。以下、一択に対して初めて本音の感情をぶつけるセリフ抜粋。
 
「僕はホント嫌いなんですよ。あなたみたいなバカが。何かを成し遂げようとするなら、ちゃんと学んだらどうなんだよ!俺はバカなんでこんなことしかできないみたいなこと言うんだよ、あんたみたい人はさ。さも思いつきとか直感の方が真理をついてるんじゃないかって平気で思ってる。それが許せないんだよ。わかんないんだったらわかんないまま済ませるなよ。自分がバカだと思ったらバカじゃなくなるよう努力しろよ。~」
 
自分も一択のような人物はあまり好きでない部分まあったので、よく言った!と思いました(笑)
 
 
あと、興味深かったポイントは、ロックとは何ぞやということが作品を通して語られており、その見方が独特でなるほどと思ったので、以下、少し長いですが、一択の飲み友である詩人を目指す馬場ちゃんの台詞と一択の台詞を引用。
 
「オレは、ロックの原点てのは、あいつじゃないかと思うんだ。少年。ほら、裸の王様に出てくるさ。~
みんながさ、分かってんだけどそれ言う?みたいなことをさ、軽くぽ~んと言うわけよ。みんな平気なんですか?王様、裸じゃないんですか?みたいな言い方だとさ、うるせぇよ黙ってろ、みたいな感じになっちゃって、世界は動かないの。王様は裸のまま。でもさ、あれ?王様はだかじゃね?ヌードキングじゃね?みたいに言うとさ、みんなが、だよな、そうだよね、みたいな風にして世界は動くわけだ。それが、ロックでしょうよ。 」
「ロックが空気読んじゃだめ。空気を切り裂くのがロックでしょうよ。ロックは、うるせぇって言い続けられないと。」
一択
「ロックってのは、弱い者の心の叫びみたいなところがあるじゃないですか。だから弱い人をちゃんと守るのもロックなのかなって」
 
 
残念というか、個人的にちょっと受け入れ難い要素もあって、それは花の旦那との決闘。相手は格闘技経験者?(うろ覚え)で、一択がボコボコにやられてしまうんですが、それをアパートの面々が温かく見守っているという構図がどうにも違和感。一応、犯罪ですし、もう少し対決の仕方を考えて欲しかったなと思います。
 
最後に、外せないのは役者陣の好演で、峯田さんの唯一無二の存在感はもちろんですが、それに勝るとも劣らない海役の住田萌乃の圧倒さ。身体表現と細かな感情の機微を見事に捉えた微妙な表情の変化が素晴らしく、見事に盲ろう児という難役を演じきっていました。