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さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

【 亜人ちゃんは語りたい 】評 マイノリティへの合理的配慮のあり方、理想的な向き合い方

亜人ちゃんは語りたい」の世界は、怪物や妖怪が亜人(デミ)と呼ばれ、一般社会に自然に溶け込んでおり、社会的な弱者として亜人に対する「生活保障」が出ていたりするといった設定で、物語は、高校を舞台とした亜人に興味がある教師と、亜人の生徒との交流を中心に描いた学園ものだ。

出てくる亜人は、女性のみで、「ヴァンパイア」、「デュラハン」、「雪女」の生徒と、「サキュバス」の教師がメインキャラで、基本的には男性向け日常系の緩いコメディの体裁だが、根底としてはマイノリティに対する優しい視座があり、教師が生徒の亜人特有の悩みについての相談にのっていき、理解を深め、生徒たちの成長が描かれる青春ドラマである。

まず、合理的配慮とは何かを説明すると、障害者権利条約で『障害のある人が他の人同様の人権と基本的自由を享受できるように、物事の本質を変えてしまったり、多大な負担を強いたりしない限りにおいて、配慮や調整を行うことである』と定義されているもので、具体的な解説は以下の記事を読んで頂きたく思います。

 

障害者差別解消法、社会に求められる“合理的配慮”とは? / 大野更紗×近藤武夫×荻上チキ | SYNODOS -シノドス- 

作品における、合理的配慮のケースとして、一番わかりやすいのは、頭部と胴体が分離している「デュラハン」の話で、デュラハンは常に頭を抱えていないといけないことから、教師の高橋鉄男が、学校指定の手提げカバンでは不便だから、リュックで通学することを許可してほしいと校長にお願いするエピソードで、これは正に合理的配慮そのものだ。

また、高橋鉄男の亜人への向き合い方が、マイノリティに対しての向き合い方に通じるもので、それを現す重要な代表的なセリフを引用する。

「物の見方は一方向ではダメだ。双方向でしかるべきだ。亜人の特性だけ見ていると、個性を見失う。人間性だけ見ていると、性質に起因する特有の悩みの原因にたどり着けない。どちらも大切だ。バランスが大事なんだ。」


これと関連して、亜人たちに対してどう接すればいいか悩む同級生たちの会話も重要なので引用。

亜人の事って同じ人間だと思っていいのかな?」

「俺たちと違うっていうのか?そりゃ、差別ってもんだろ?」

「そうかな?さっき亜人は普通の人とほとんど変わらないって言ってたけど、それはつまり違うところはあるってことでしょ。そこを見ないで、同じ人間だって、それこそ差別なんじゃないかな?同じと思ってる人間に特有の悩みを相談したいと思う?」

この会話は、教頭が高橋先生に「あなたに頼りすぎているのは、あの生徒たちにとってよくない。様々な人との交流によって悩みを解決していく方が良いのではないか?」と進言したのを一人の生徒が聞いて、なぜ自分たちに相談してくれないのかというのを話し合ったもので、これは、しっかり亜人固有の特性を理解し、合理的な配慮を考えたうえで対等に付き合うことの大切さを説いており、作品全体を通じてインクルーシブ教育(詳しくは記事参照)の理想的なあり方が示されています。

 

この作品を観て、現実のマイノリティについて思いを巡らし、理解しようとする人が増えることを願いたいですが、感想を眺めてみると単にキャラ萌え青春アニメとしか捉えていない感想も目立ち、現実のマイノリティ理解の深化の難しさも垣間見ました。