さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

作り手の驕りと逃げが目立った『Re:CREATORS( レクリエイターズ )』

まず感想を簡潔に言うと、思い入れもないキャラたちによる微妙なシナリオのスーパーロボット大戦というのが正直なところ。

特番が3話入ったのは、あおきえい監督のインタビューで語られていますが、要は公開されている広江礼威氏の原作シナリオ通りに作ったら枠が余ったので特番で埋めましたってことだと思うのですが、余裕があるなら何故もっと各々の作品内エピソードを描かないのか疑問。承認力のある人気作を説得的に描かなければならないといった課題から逃げて、雰囲気だけ人気があるように見せているとしか感じず、思い入れを持てない要因となっている。特にアルタイルのバックボーンが描かれていないことは致命的で、21話でセツナが語った『あなたは同時に弱き者の王様。弱き者の騎士。そうやってあなたを見る人がたくさんいたのです。』『私みたいなどこかで折れてしまいそうな人達にこの世界でもう一歩だけ進む力をあなたが与えてくれるんです』が、唐突すぎて、そんなバックボーンがあったの!?とキョトンとするしかありませんでした。

そもそもアルタイルについて、ソシャゲのキャラがある程度人気になるのはわかるけど、その改変二次創作キャラ動画が300万再生超え、その派生動画も人気になるというのが非現実的に感じ、そんなに人気なのに創造主の人たちは全く知らないというのはどうなんだとも思う。あと、ホロプシコンの能力で最後に出された、設定をリセットするとかなかったものにするというのは、そんな設定の二次創作を作った人がいるということで、ずいぶん都合がいいなと、苦笑してしまった。

結局、世界崩壊のプロセスは、メテオラが解説した通りのもので正解なのかどうか、誰も世界の修復力の作用によって弾かれず、現実に対して影響もないままラストバトルを迎えたので、よくわからずのまま。承認力でキャラを現界させたりしても何も起こらないんだから、見立ては完全に間違っているんじゃないかと思ってしまう(笑)

一番首を傾げたのは、チャンバーフェスの観客の反応で、最初に戦った時にセレジアがまみかに対して言った「あなたの物語はみんな物分かりが良かったのね」状態になっており、おかしな点を箇条書きにすると、

  • 前日譚である程度辻褄を合わせているだろうとはいえ、展開や会話についていけてるのが不思議
  • ひかゆが翔を倒す展開や、アルタイルが次々と主役キャラを倒して、各キャラのファンは何とも思わないのか
  • ネタバレに対して笑って突っ込む人ばかりなのは現実的でない
  • 主役勢より、アルタイルが共感されて承認力を得た転換点が謎

といった具合で、画面に否定的なコメントも映しているとはいえ、基本的には承認力に影響がないという従順ぶり。承認力の活かし方として、アルタイルが承認力を奪うということ以前に、承認力によって展開が左右されて作者勢があわててシナリオをリアルタイムで修正し、指示したりとかいった活かし方があったのではないか。

テーマである、クリエイターの業や想い、作品により受け手側が新たな視点を得たり刺激を受け、それがまた別の創作にも繋がるようなミメーシスを起こしたりする物語自体の偉大さを謳っていることは良いが、ある種、自明であることをそのまま出してしまっていることの恥ずかしさがあり、狡い感じがしてしまいます。一方で、セツナが自殺した動機である炎上事件で、受け手の身勝手さ、気楽さも描いているが、作り手側は神聖化されていてバランスが悪い。ぞんざいな仕事をする創造主を出したり、現界したキャラがエロ同人誌を読んでしまい、ショックを受けてアルタイル側に寝返るような展開などあったらよかった。

ストーリー以外の部分では、セレジアが承認力により新たな力を得るところ以外のバトルがアルタイル無双すぎて、技を次々と繰り出すのがだらだら続く単調なものになってしまっていたことが気になった。あとは前作も含み、フィルムとして熱がなく、脚本マターで監督のこれがやりたいという作家性が薄いのは残念で、自主会社のオリジナルなのだから、次作はそういう面を出して欲しいと思います。

 

Re:CREATORS Original Soundtrack

Re:CREATORS Original Soundtrack