『おそ松さん』は映像ギャグの概念を変えたのか
今やほぼオワコン化していると思われる岡田斗司夫さんが、『おそ松さん』を映像ギャグの概念を変え、アニメの中で今まで遅れていた笑いの分野で世界最先端になったとベタ褒めしており、この発言について検討をしていきたいと思います。
ライターの多根清史さんが、お笑い番組としての『おそ松さん』を詳細に解説しているのですが、それを参照します。
コントは、テレビタレントという“キャラクター”を量産してきた実績のあるフォーマットだ。それに「アニメならでは」も加味した「おそ松さん」は、「ザ・ドリフターズ」と、キャラクターにスポットを当てた「ラブライブ!」のハイブリッドといえる。キャラクタービジネスの面からも、アニメ業界にとって学ぶべき点が多いといえよう。 http://mantan-web.jp/2016/03/28/20160326dog00m200040000c.html
恐らく紙面の都合で触れていないだけでしょうが、過去にそういった作品がなかったかといえばそうではなく、その礎的存在として『ギャラクシーエンジェル』があると思います。2期目からは朝に放送されていたので、下ネタはほぼ無かったと思いますが、パロディありの不条理ナンセンスギャグアニメで、キャラクタービジネスも幅広く展開されていました。
また、本題とは少し離れますが、同時期に放送開始した『ジャングルはいつもハレのちグゥ』もよくできたハイテンションコメディ作品で、おそ松さんに脚本で参加した横手美智子さんがシリーズ構成をしています。
ギャグアニメについて調べると、検索上位に「おすすめギャグアニメ○選」という記事がいくつか出てくるのですが、入っているのは最近の作品ばかりで、上記した作品はスルーされていて寂しい限りです。
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本題に戻りますと、そもそも毒のある過激ネタは原作の「おそ松くん」などの赤松先生の作風をリスペクトしたもので、アニメ(個人的には2作目を少し観た程度)も、イヤミとチビ太がほぼ主役だったようですが、様々なシチュエーションでのコント形式でした。
そして、1話で話題をさらったパロディや下ネタ要素などの手法は、監督はじめメインスタッフが関わった『銀魂』で培われて引き継がれたもので、スタッフを知らずして観ても勘が良い人は銀魂のスタッフだなと判る作風になっていると思います。
更に、世界最先端というならば、海外作品にも目を向けなくてはなりません。おそ松さんでも18話で『チキチキマシン猛レース』をパロっていましたが、他に有名どころでは、『トムとジェリー』、『パワーパフガールズ』、『サウスパーク』、『スポンジ・ボブ』があります。あとは、残虐さではPG-12指定の『ハッピーツリーフレンズ』も外せません。
中には日本の作品の影響を受けているものもあると思いますが、やはり過激さは高く、センスも独特で、これらの海外アニメのエッセンスを日本アニメ風にした『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』という作品も作られました。
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さて、拙いながら簡単に一通りギャグアニメを俯瞰的に振り返りましたが、岡田さんが『おそ松さん』はこれらの作品よりギャグアニメとして何が優れていて世界最先端と言っているのかは、根拠が不明で論じようがありません。ただ、これまで挙げた作品と『おそ松さん』で決定的に違うのは、キャラクターの身近さにあり、人気を社会学的な視点から分析した記事を2つ紹介します。
これらの分析が妥当かどうかという問題もありますが、そこは置いといて、結果としてBD・DVDの1巻が10万枚以上売れており、歴代平均売上ランキングの8位に踊りでています。
個人的には、そこまでキャラクターに共感せず、普通にギャグアニメとして楽しんでいましたが、話により当たり外れもあり、ギャグアニメ作品として一番好きかと問われると、そうでもなく、この作品に対してあまり熱はありません。今後のアニメにどう影響を与えるのか判りませんが、ヒット作を半端に真似をして、それが成功に繋がった例はあまりないと思うので、クリエーターやプロデューサーは変に左右されずに作品づくりに邁進して欲しいと願います。