『嘘なんてひとつもないの』 感想
BSプレミアム「プレミアムよるドラマ」枠で放送された『嘘なんてひとつもないの』のレビュー。
原案は、CM『au三太郎シリーズ』や『家庭教師のトライ』など、話題作を手がけるCMプランナー・篠原誠さん。
高校時代に長い付き合いの同級生による裏切りによって、対人恐怖症になり、7年間引きこもっている、パイロットが夢の山崎真(24)が主人公。核心に触れるとネタバレになるのですが、公式のあらすじで1話の展開がほぼ書かれていて、気になる方は、そちらを参照してください。
一言でいえば、『世には奇妙な物語』に出てくるような不思議系の話で、あまりリアリティはなくツッコミどころはあるが、毎回驚くような展開があり、次週も観たくなる仕掛けが見事な、ほろ苦い青春ストーリーです。
ここからは、なるべくネタバレを避けた詳しい感想。
真は、モラルに反する、人権侵害的なことをされるのだが、あんなことをされたら、余計に症状が悪化してしまいかねず、現実的に考えたら、今の時代、かなり問題になるような行いで、気持ちのいい展開ではない。そこを、リアリティを薄くすることで、なんちゃって感を出し和らげて、不快感をあまり与えない工夫がされており、そこは巧い。
石井杏奈演じるヒロインは、小悪魔的だか純粋さを持ち、真を裏切りつつ、陰で支える存在となるが、個人的には、こんな企画に乗っている時点でちょっと有り得ない感じで、本当はいい子みたいな描かれ方に釈然としないものがあり、好きにはなれなかった。
結末は、真にとって結果的には良かったといえる展開であるけれど、これだと裏のフィクサーの人がやったことも、結果的には間違いではなかったということになり、作品の視聴者が完全にフィクションとして受け止めて楽しむだけならいいんですが、現実に持ち出して、精神科医の斎藤環さんが批判するような「タカ派的ひきこもり矯正施設」(以下、参考記事紹介)を容認することにも繋がりかねない面もある、やっかいさを孕む内容でもあるなと感じました。