さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

若者自ら「やりがい搾取」に陥る構造を見事に描いた『命売ります』5話

脚本:神田優 演出:石井満梨奈

ゲスト俳優:大谷亮平山崎銀之丞矢本悠馬

 

原作にないオリジナルな話で、ブラック企業が舞台。ブラックなIT企業で働き、衝動でビルから飛び降りるも助かった、プロジェクトリーダーの鎌田が、ブラック企業であることを世間に知らしめるため、過労死で死んでくれと羽仁男に依頼~といったあらすじ。

 

ブラック企業を扱ったドラマは数あり、つい最近も野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』でも従業員が立ち上がる姿が感動的に描かれていましたが、この話は単純に搾取する経営者VS社員といった構図ではなく、社員自らが仕事を生きがいとしているが故にブラックな働き方を肯定、実践してしまい、そこからはみ出すものを軽蔑しだすといった、気づかず「やりがい搾取」されている若者が描かれています。これは、少し前に話題になった居酒屋甲子園あたりを参考にしているのではないかと思いますが、こういったある種のねじれを描いたドラマは自分が知る中では初めてです。

色々とひねりの利いた、生きがいや働きがいがもたらす落とし穴を描き、ホラーチックなオチも秀逸な脚本プラス演出も良く、石井満梨奈さんは、これまでプロデューサー業をしており、今回が初演出のようなんですが、朝礼で復唱させる社訓の『 死んでも諦めるな! 死んでも休むな! 死んでも戦え!』にダンスめいた身振りをつけて繰り返し見せる、コミカルに滑稽さを出す演出など面白く、今後の活躍を期待させます。