さぶかるもん

アニメ歴約20年、ドラマ歴約5年の硬派オタクによる備忘録

BSジャパンドラマ『命売ります』 1話

http://www.bs-j.co.jp/inochiurimasu/smp/

 

監督:金澤友也、河原瑶(4話・6話)、石井満梨奈(5話)

脚本:小山正太、大林利江子、加藤公平、神田優

出演:中村蒼、YOU、田口浩正 ほか

 

三島由紀夫原作で、2年前にベストセラーになった作品のドラマ化。

原作は未読。原作自体が娯楽性が高い大衆小説のようで、お色気もありの誰でも楽しめるような内容となっており、ノリとしては『特命係長 只野仁』に文学性が加わった感じのものといった印象。

OP曲が人間椅子で、それをバックに1話にもゲスト出演している田中泯がダンスするといった格好いいもので、それだけでも見る価値あり。

中村蒼演じる主人公の山田羽仁男は、仕事ができて不自由ない生活を送っていたが、ふと先が見える人生に絶望し、自殺を決意するという、なんとも贅沢な悩みで、あんまり共感は出来ませんが、後半になるにつれ滑稽さが出てきて魅力が出てきます。しかし、女性を口説くのに人に貰ったハウツー本に頼るなど、天然的であんまりデキる人間には見えないという(笑)

羽仁男が通う行きつけのカフェのマスター(YOU)が、羽仁男が死にたがってることを知った時の反応が軽すぎとかツッコミどころはあるけど、そこもまた楽しめる要素でもあり、どんな結末を迎えるのか気になります。

 

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 

 

 

 

 

 

 

『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』 ネタバレなし感想

基本的には活劇エンタメなので、あまり語ることはないのですが、面白かったです。

 

数々のドラマを手がけた、ラブストーリーの名手である大石静さんの初アニメ脚本で、その手腕がこの作品でも発揮されており、ヒロインが禁断の恋をし、様々な壁を乗り越え向き合っていく様を壮大に描いていて、心を打たれる。アレサンドのエピソードもよく、人の愚かさ、哀れさが凝縮されていた。ただ、個人的な好みを言えば、ラブストーリーを主軸とした壮大なファンタジーとしては『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』には及ばなかったかなと。

 

不満点は、シャリオスの描き方が中途半端なところがあり、魔族を奴隷化し、迫害していた理由が不明瞭で、古代兵器を復活させるために負のパワーみたいなものが必要なのかなと思っていたが、そうではなかった。人間ファーストで世界の秩序の安定を考えていたことは伺えるが、その辺のことはニーナにちゃんと叱って欲しかった。

 

カイザルの最後の扱いやニーナの恋愛模様がメインなことに、前作のコアなファンの批判が脚本家である大石静さんに向けられているのを目にしますが、大石さんの責任にするのはお門違いで、大石さんのインタビューを読めばわかりますが、プロデューサーが話の大枠を考え、打ち合わせを重ねて、守るべきところは守って修正し、最終的に監督が認めたうえで作られているわけですから、批判するならば監督も批判すべきです。

 

まだ、続編の可能性を残しているので、期待して待ちたいと思います。

 

 

 

作り手の驕りと逃げが目立った『Re:CREATORS( レクリエイターズ )』

まず感想を簡潔に言うと、思い入れもないキャラたちによる微妙なシナリオのスーパーロボット大戦というのが正直なところ。

特番が3話入ったのは、あおきえい監督のインタビューで語られていますが、要は公開されている広江礼威氏の原作シナリオ通りに作ったら枠が余ったので特番で埋めましたってことだと思うのですが、余裕があるなら何故もっと各々の作品内エピソードを描かないのか疑問。承認力のある人気作を説得的に描かなければならないといった課題から逃げて、雰囲気だけ人気があるように見せているとしか感じず、思い入れを持てない要因となっている。特にアルタイルのバックボーンが描かれていないことは致命的で、21話でセツナが語った『あなたは同時に弱き者の王様。弱き者の騎士。そうやってあなたを見る人がたくさんいたのです。』『私みたいなどこかで折れてしまいそうな人達にこの世界でもう一歩だけ進む力をあなたが与えてくれるんです』が、唐突すぎて、そんなバックボーンがあったの!?とキョトンとするしかありませんでした。

そもそもアルタイルについて、ソシャゲのキャラがある程度人気になるのはわかるけど、その改変二次創作キャラ動画が300万再生超え、その派生動画も人気になるというのが非現実的に感じ、そんなに人気なのに創造主の人たちは全く知らないというのはどうなんだとも思う。あと、ホロプシコンの能力で最後に出された、設定をリセットするとかなかったものにするというのは、そんな設定の二次創作を作った人がいるということで、ずいぶん都合がいいなと、苦笑してしまった。

結局、世界崩壊のプロセスは、メテオラが解説した通りのもので正解なのかどうか、誰も世界の修復力の作用によって弾かれず、現実に対して影響もないままラストバトルを迎えたので、よくわからずのまま。承認力でキャラを現界させたりしても何も起こらないんだから、見立ては完全に間違っているんじゃないかと思ってしまう(笑)

一番首を傾げたのは、チャンバーフェスの観客の反応で、最初に戦った時にセレジアがまみかに対して言った「あなたの物語はみんな物分かりが良かったのね」状態になっており、おかしな点を箇条書きにすると、

  • 前日譚である程度辻褄を合わせているだろうとはいえ、展開や会話についていけてるのが不思議
  • ひかゆが翔を倒す展開や、アルタイルが次々と主役キャラを倒して、各キャラのファンは何とも思わないのか
  • ネタバレに対して笑って突っ込む人ばかりなのは現実的でない
  • 主役勢より、アルタイルが共感されて承認力を得た転換点が謎

といった具合で、画面に否定的なコメントも映しているとはいえ、基本的には承認力に影響がないという従順ぶり。承認力の活かし方として、アルタイルが承認力を奪うということ以前に、承認力によって展開が左右されて作者勢があわててシナリオをリアルタイムで修正し、指示したりとかいった活かし方があったのではないか。

テーマである、クリエイターの業や想い、作品により受け手側が新たな視点を得たり刺激を受け、それがまた別の創作にも繋がるようなミメーシスを起こしたりする物語自体の偉大さを謳っていることは良いが、ある種、自明であることをそのまま出してしまっていることの恥ずかしさがあり、狡い感じがしてしまいます。一方で、セツナが自殺した動機である炎上事件で、受け手の身勝手さ、気楽さも描いているが、作り手側は神聖化されていてバランスが悪い。ぞんざいな仕事をする創造主を出したり、現界したキャラがエロ同人誌を読んでしまい、ショックを受けてアルタイル側に寝返るような展開などあったらよかった。

ストーリー以外の部分では、セレジアが承認力により新たな力を得るところ以外のバトルがアルタイル無双すぎて、技を次々と繰り出すのがだらだら続く単調なものになってしまっていたことが気になった。あとは前作も含み、フィルムとして熱がなく、脚本マターで監督のこれがやりたいという作家性が薄いのは残念で、自主会社のオリジナルなのだから、次作はそういう面を出して欲しいと思います。

 

Re:CREATORS Original Soundtrack

Re:CREATORS Original Soundtrack

 

 

『お母さん、娘をやめていいですか?』へのカウンターとしての『過保護のカホコ』

『お母さん、娘をやめていいですか?』(以下、オカムス表記)は、今年NHKで放送された井上由美子脚本のドラマで、娘を支配し、依存する毒親を描き話題となった作品で、『過保護のカホコ』(以下、カホコ)と共通点は多い。しかし、描かれ方は正反対的で『オカムス』が狂気を帯びた深刻なサスペンスである一方、『カホコ』はコメディ調のホームドラマである。

 

加穂子の家族や親族の家庭のゴタゴタは、幼少期に母親が出ていった麦野初からしたら「心温まるエピソード」であるとして、あくまで恵まれた家庭として位置付けており、これが、遊川さんが込めた願いの核であり、そういったメッセージはドラマの中で殆ど台詞で説明されている。人間は皆、欠点があるという前提に立ち、不幸にならない、しないために何ができるのか考え、心のドアを開ける鍵となる存在の必要性を説いている。最初は過保護であることが麦野初を通して否定的に語られていたが、最終的にはその初も加穂子に保護をされて居場所を見つけており、過保護で何が悪いのかといった結論に至るのだ。

 

一方、このドラマを、家族愛、家族は仲良くしなければいけないといった価値観の押しつけと感じ受け付けなかったり、呪いと受け取るような方もいると思われるが、糸や教子おばさんのことを見ると、そういった面を相殺する役割を担っていると思われる。糸は、親のことを退屈な人間と思っており、それは改心した後でも恐らく変わっていない。「親や兄弟なんてどうでもいい。血縁関係ってだけでなぜ愛さなければいけないのか」「自分は愛のない人間」と語っていた教子おばさんは、最終的に愛に目覚めたように見える。しかし、「自分が傷ついたり失敗したりしてもいつでも帰ってこれる場所があることがどれだけ幸せなことか私が一番よくわかってる」というのは本心としても、フリースクールを作ろうと考えたのは、高齢者向けのパソコン教室をやろうとしたノリと本質的には変わってないのではないかとも思えるのである。幸せな環境であることは感謝するべきだが、親を好きになる必要も仲良くする必要もなく、適度な距離を保ちつつ、自分のやりたいことや、生きがいのために悪く言えば「利用」してうまく生きていく、したたかな親とのつきあい方も同時に提示しているのだ。

 

引っかかる点を挙げるとしたら、初がなんだかんだで加穂子に依存してしまってることで、方向性に悩んでたとはいえ、自分で決めて学んだ美術についての価値判断を加穂子に投げてしまっているのは意志薄弱すぎるのではないかと思う次第。

 

ドラマとしての評価は、遊川さんの前作、『はじめまして、愛しています。』もそうだったが、社会的なメッセージ性を前面に出し、ストレートに伝えたいことを伝えるといったことを意識しているような作りで、それはそれでありであるが、展開はご都合主義なところが目立ち、絵に描いたような大団円なので、物足りなく感じ、冷める部分もあるのが正直なところ。『カホコ』は、すごくキャラが立っていたので楽しめたが、今後もこのモードが続くのか注目したい。

 

過保護のカホコ Blu-ray BOX

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2017年10月放送開始ドラマ 注目作6選

前期はお休みしてしまいましたが、また始めます。

 

・奥様は、取り扱い注意

http://www.ntv.co.jp/okusama/

【脚本】金城一紀

【演出】猪股隆一

【主演】綾瀬はるか広末涼子、本田翼

これまでの金城さんの作品とは毛色が違う、ホームドラマとアクションを組み合わせたドラマとなるようで楽しみです。

 

・刑事ゆがみ

http://www.fujitv.co.jp/yugami/index.html

【脚本】倉光泰子大北はるか、藤井清美
【演出】 西谷弘、加藤裕将、宮木正悟

【主演】浅野忠信神木隆之介

主演2人の組み合わせも気になりますが、演出陣は賞も取ったりしているフジテレビドラマのホープが集まっているのも注目。

 

・明日の約束

https://www.ktv.jp/yakusoku/

【脚本】古家和尚
【演出】土方政人、小林義則

【出演】井上真央及川光博工藤阿須加、白洲迅、新川優愛羽場裕一手塚理美仲間由紀恵

ミステリーのようですが、スクールカウンセラーが主人公というのはドラマで初めてだと思うので、その点を注目しています。

 

・Re:Mind

http://www.tv-tokyo.co.jp/remind/

【企画・原作】秋元康
【脚本】室岡ヨシミコ、田中洋史、保坂大輔
【演出】内片輝、石田雄介、頃安祐良

【主演】けやき坂46ひらがなけやき

テレ東とnetfilixの共同製作ドラマ3弾。ひらがなけやきの存在をこれで初めて知ったのですが、密室サスペンスもので、全世界配信も狙う意気込みに期待したいです。

 

民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜

http://www.fujitv.co.jp/minshuunoteki/index.html

【脚本】黒沢久子
【演出】金井紘、石井祐介

【出演】篠原涼子高橋一生古田新太前田敦子千葉雄大余貴美子大澄賢也田中圭石田ゆり子

主婦が市議会議員になって奮闘するドラマ。脚本の黒沢久子さんは若松孝二監督「キャタピラー」などの重い題材の作品から、最近ではウルトラマンの脚本も書いていて、これが連続ドラマ脚本デビューとなり注目しています。

 

・監獄のお姫さま

http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/

【脚本】宮藤官九郎
【演出】金子文紀福田亮介、坪井敏雄、渡瀬暁彦

【出演】小泉今日子満島ひかり伊勢谷友介夏帆塚本高史、坂井真紀、森下愛子菅野美穂

まだちょっとストーリーがよくわかりませんが、ここ最近はプロデューサーとしてもヒット作を飛ばしている金子文紀さんの作品で話題性になることは間違いなし。

『正解するカド』感想 その2

後で思ったことを追記。

 

ワムやサンサという、ドラえもんで言うところの秘密道具をヤハクィザシュニナが授ける段階で終わっていて、それをどう使って、何が起こったかが全く描かれないというのは、やはりSFとして物足りない。

 

あと、ワムが公表されてからの国連とのいざこざの描写が、ネトウヨの妄想的な「冷静な日本」と「感情的な世界」みたいな構図なのがちょっと気になりました。まあ、この作品の総理が言ってることは極めてまともなんですが。

『正解するカド』感想 ※若干ネタバレあり

最後の展開に不満を漏らす人が散見されますが、私も同感で、野崎まどさんの小説は、『know』だけ読んでいるのですが、一部テーマが似通っている部分があって、それの悪い焼き直しという印象を持ってしまいます。

アスキーの野口光一Pのインタビューで、バトルものにならないと語っていたのにこれはどういうことでしょう(笑)

http://ascii.jp/elem/000/001/501/1501283/

まあ、バトル要素があるのは盛り上げ方としてありだと思いますし、ラストの逆転アイデアは面白いのですが、げんなりしたのはそれ以前の、沙羅花がヤハクィザシュニナを止めようとした理由が、感傷的、綺麗事すぎることで、恵まれて育って全く不幸を知らず、みんな善い人と思っているお嬢様か!とツッコミたくなりました。

テーマ的なものは、途中でほぼ提示されており、その部分を掘り下げていきヤハクィザシュニナが審判をくだしていくみたいな社会派SFを期待していたのですが、ザシュニナの欲望が前面に出て、真道ラブみたいなBL要素を押し出し、なんとも陳腐なダメなジャンプ漫画的な展開になってしまったのは残念です。

あと、花守も可哀想だけど、幸花が、そこに愛があったとはいえ、倒すために生まれ、親じゃない男性に育てられたというのは、引っかかる部分ではある。