河森正治総監督作『重神機パンドーラ』先行配信1話 感想
NETFLIXの先行配信で視聴。
最近の河森正治さんの作品は個人的にピンとくるものがなく、『アクエリオンEVOL』以降ちゃんと最後まで見た作品はないという感じなんで期待値は低め。
日中共同制作で舞台のモデルとなっているのが中国の重慶と、世界展開に力を入れているようです。以下、参照。
http://j.people.com.cn/n3/2018/0328/c94473-9442590.html
次世代エネルギーの暴走事故で進化フィールドというものが発生し、多くの動植物、AIまでもが特殊な進化を遂げ、生物と機械の境界線すら曖昧になり、誕生した特異進化生物が人類を脅かすという設定。ここで疑問に思うのがAIに影響でるのは謎で、人間には何の影響も及ぼさなかったのか?ということ。今後、敵として人間が特異進化したような存在が出てくるのか分かりませんが、出てきたところで、ああやっぱりという感じになってしまうのは目に見えており、不安です。
主人公は事故を引き起こした中心人物の研究者で、追放されて辺地で妹と暮らしているのですが、本当の妹ではなく、家族契約を結んで妹として振る舞っているという設定で、その事情がどう生かされるのかがポイント。
バトルがメインであまりキャラに焦点が当てられず、新鮮味や印象に残る要素が殆どなく、また途中で視聴を切ってしまうかもという予感。
スタッフで見る、チェックすべき2018年春ドラマ
2018年4月放送開始のドラマの中でスタッフ的に良作になるだろうと予想される作品をピックアップしました。
「宮本から君へ」
http://www.tv-tokyo.co.jp/miyamoto_kimi/
監督・脚本:真利子哲也
出演:池松壮亮、柄本時生、星田英利、華村あすか、新名基浩、古舘寛治
1992年に小学館漫画賞を受賞した新井英樹原作のドラマ化。監督は映画『ディストラクション・ベイビーズ』で商業映画デビューし、高い評価を受けた新鋭の監督。
「コンフィデンスマンJP」
http://www.fujitv.co.jp/confidenceman_jp/index.html
脚本:古沢良太
演出:田中亮、金井紘
フジテレビ作品では『リーガル・ハイ』、『
デート〜恋とはどんなものかしら〜』でおなじみの古沢良太脚本作。過去2作と演出スタッフは違いますが、価値観を揺さぶるようなハイテンションな楽しい作品をまた見せてくれるのか期待。
「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」
http://www.nhk.or.jp/dodra/yakeben/
作:浜田秀哉
演出:柳川強、佐々木善春、渡辺哲也
主演:神木隆之介
『ラストホープ』で第2回市川森一脚本賞を受賞した浜田秀哉脚本。演出チーフの柳川さんは、NHKスペシャルのドラマ『鬼太郎が見た玉砕』、『最後の戦犯』などが代表作。
現実に文科省が導入を進めているスクールロイヤーという学内弁護士が主人公で、新しい形の学園ドラマとしても注目です。
「未解決の女 警視庁文書捜査官」
http://www.tv-asahi.co.jp/mikaiketsu/
脚本:大森美香
演出:田村直己、樹下直美
主演:波瑠、鈴木京香
最近はNHKの仕事ばかりしていた、『あさが来た』の大森美香さんの久々の民放作。新作がテレ朝ミステリーとは意外ですが、文書を解析して事件を解決するという一見地味な題材をどう面白く見せてくれるのか期待。
Netflixオリジナルアニメ『A.I.C.O. Incarnation』 全話視聴感想
Netflixで9日に配信開始した『 A.I.C.O. Incarnation 』を視聴。
監督は『翠星のガルガンティア』、『正解するカド』の村田和也氏で、全話絵コンテをやっています。シリーズ構成は『コメット・ルシファー 』の野村祐一。この二人は『交響詩篇エウレカセブン』で仕事をしていて、評価の高い「バレエ・メカニック」回を担当しています。
世界観としては未来都市で、研究されていた人工生体が暴走し、マターと呼ばれる怪物化し猛威を振るう日本が舞台のバイオSFアクション。
『B:the Beginning』が20~30代向けとしたら、この作品はティーン向けといった感じで、設定は良いのですが、ドラマ性は薄く、全体的にチープな展開で、キャラもあまり魅力的ではなく、余計な要素を入れすぎているといった印象。物語の核心に迫る後半はそれなりに盛り上がるんですが、そこに至るまでが長く、映画で1時間くらいにくる見せ場に2時間かけてしまっているといった感じで、『B:the Beginning』と同じ問題点があると思います。TVシリーズではないのだから、『カウボーイビパップ』などのような単発エピソード型で積み重ねる形式じゃない限り、全12話とかに拘る必要はなく、もっと柔軟な作り方をして貰いたいです。
アクションの方も単調で、基本的に触手、人型のマターがどんどん出てきて応戦するの繰り返しで、大して代わり映えがしないのが難点。ラスボス的な存在との戦闘も緊迫感に欠け、もっと恐怖心を煽ったりするような敵の見せ方に工夫が欲しいところ。
Netflixオリジナルアニメ第一弾の湯浅政明監督『DEVILMAN crybaby』は、監督の作家性とアニメーター含む個々のスタッフの作家性が競合し、熱のある面白いフィルムになっていましたが、あとの2作はそういう作家性が前面に出ておらず、既存の枠内からはみ出さない作りで物足りず、もっと挑戦的な作品が見たいです。今までボンズに関わったスタッフで言えば、松本理恵監督や宮地昌幸監督の作品を期待します。
Netflixオリジナルアニメ『B:the Beginning』 全話視聴感想
Netflixで2日に配信開始した『B:the Beginning』を視聴。
アニメーター・キャラクターデザイナーとして活躍している中澤一登さんと、代表作として『キルミーベイベー』、『ダンまち』を監督した山川吉樹さんとの共同監督作品。中澤さんは原作も担当しており、長編シリーズものは初監督。
特殊犯罪捜査課のキースと異形に変身する能力を持つ黒羽(こくう)という少年のW主人公体制で、ジャンルとしては、クライムサスペンスとダークファンタジーが融合した謎解きしつつ話が進んでゆく展開。どちらかといえばメインはキース周りの話で、ファンタジー要素を除いても成立するようなストーリーでもあります。
ファンタジー部分の設定以外は、正直どこかどこかで見たことのあるプロットの組み合わせという感じで、国内外の刑事、サスペンスものを見慣れた人には新鮮さはなく、それらの良質の作品と比べると見劣りする内容と思います。わかりやすいところで言えば、キースのキャラや文字演出なんかは『SHERLOCK(シャーロック)』を意識している感じ満々。
全12話なんですが、ほぼ一本の事件を延々と追うような形になっていて、海外ドラマのスピード感と比べると展開が遅く感じ、密度が薄く冗長になってしまっており、うまく削って2時間弱ぐらいの映画サイズに詰めればもっと体感的に面白さが持続するようになって良かったのではと思います。
脚本の石田勝也さんは、制作進行出身で、脚本家としては過去に単発で2本しかやっておらず、なぜこの方がシリーズ構成に抜擢されたのか謎なんですが、上記の欠点を除けば、サバサバした性格のヒロイン的な女性刑事のリリィのキャラ造詣やコメディ的要素などよい部分もありました。
あとは、アニメーションとして中澤監督こだわりのアクションは見応えがありました。配信ものだとコマ送りして見れないのが残念。
制作のProduction I.GはNetfilixと提携しており、今後も次々と作品が出てくると思いますが、個人的にはテレビシリーズ『攻殻機動隊』で脚本家デビューし、現在はプロデューサー業をしている櫻井圭記さんが関わった作品が見たいなと思います。
若者自ら「やりがい搾取」に陥る構造を見事に描いた『命売ります』5話
脚本:神田優 演出:石井満梨奈
原作にないオリジナルな話で、ブラック企業が舞台。ブラックなIT企業で働き、衝動でビルから飛び降りるも助かった、プロジェクトリーダーの鎌田が、ブラック企業であることを世間に知らしめるため、過労死で死んでくれと羽仁男に依頼~といったあらすじ。
ブラック企業を扱ったドラマは数あり、つい最近も野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』でも従業員が立ち上がる姿が感動的に描かれていましたが、この話は単純に搾取する経営者VS社員といった構図ではなく、社員自らが仕事を生きがいとしているが故にブラックな働き方を肯定、実践してしまい、そこからはみ出すものを軽蔑しだすといった、気づかず「やりがい搾取」されている若者が描かれています。これは、少し前に話題になった居酒屋甲子園あたりを参考にしているのではないかと思いますが、こういったある種のねじれを描いたドラマは自分が知る中では初めてです。
色々とひねりの利いた、生きがいや働きがいがもたらす落とし穴を描き、ホラーチックなオチも秀逸な脚本プラス演出も良く、石井満梨奈さんは、これまでプロデューサー業をしており、今回が初演出のようなんですが、朝礼で復唱させる社訓の『 死んでも諦めるな! 死んでも休むな! 死んでも戦え!』にダンスめいた身振りをつけて繰り返し見せる、コミカルに滑稽さを出す演出など面白く、今後の活躍を期待させます。
2018年冬季アニメ 視聴継続作 現段階の感想
2018年1月放送開始のアニメの中で視聴継続する予定の作品の現在までの感想。好み順に並んでいます。
BEATLESS
ディオメディア制作ということで、懸念していた全体的なクオリティの面はやはり残念な部分はあるけど、SFとして魅力的で興味深いので暫定1位。
伊藤潤二『コレクション』
アニメとして動いて声がつくと、ホラー要素よりギャグ要素が強くなってるような気がしますが、それでも面白い。
刻刻
ジェノスタジオ初のTVアニメ作品。まだ面白さがあまり見えてこない感じなのですが、水木しげる先生や伊坂幸太郎さんが評価しているようなので今後の展開に期待。
グランクレスト戦記
『ロードス島戦記』のOVAを最近AbemaTVで見返したばかりなのですが、それと比べるとやはりストーリーやキャラの魅力がいまいちという感じがしてしまう。ほぼ主役はシルーカといってもよく、テオの存在感が薄くあまり魅力がないので、今後しっかりとした活躍かあるかどうか。
恋は雨上がりのように
演出が良いので見れていますが、ドラマが弱く、いまいち話にノレない。今のところ店長だからこそといった強い感情が感じられず、あの時優しくされたのが別の人でも惚れてたんじゃないか?と思ってしまいます。
ポプテピピック
基本的にはすごくTV的で、過去の子ども向けバラエティをオタク向けに再生産しているといった印象。面白いと感じるのはボブネミミッミぐらい。
ダーリン・イン・ザ・フランキス
あくまで現時点での感想で、評価が覆る可能性があることを前提に書きますが、今の時代にこういうものしか作れないのはセンスが死んでいるとしか思えません。過去にある性行為のメタファーを強調するようやロボットアニメとは違い、シリアスでセリフも含めた直接的な表現が面白さに全然繋がっておらず、ネタとしても笑えず、ただ下品なだけ。唯一いいと思えるのはメカデザインくらい。
AbemaTVオリジナルドラマ『#声だけ天使』 1話
原作・脚本: 横内謙介
監督: 尾形竜太
出演:亀田侑樹、佐久本宝、松本妃代、久ヶ沢徹、山口景子、仁村紗和 ほか
1話ゲスト:野沢雅子、古川登志夫、柿沼紫乃、野島健児、白石涼子、阿座上洋平、大和田仁美、亀田興毅
主役陣はオーディションで選ばれ、ほぼ無名な役者ばかりということで、メジャー俳優でない役者の活躍が増えたらいいなと思う次第で、今後の企画にも期待したいところ。
声優学校に通う主人公が、オーディションがビジュアル重視であることに怒りを覚え、クラスメイトの5人で、ボイスリクエストサービスを始め、その中で恋愛要素も絡む青春もの。
脇役も含め、キャラも過剰すぎず、自然な感じで違和感なく、個性的な人物揃いで楽しく、掛け合いもテンポよく、普通によくできたドラマであると思います。
ただ、メイン5人の中で、久ヶ沢徹さんが、役者としてのキャリアが長いこともあってか、普通にいい声で発声よく喋り、演技もうまいので、そのままプロとして通用するだろうと思ってしまうという意味で少し浮いているところはあるかも(笑)
気になる点としては、ボイスサービスというのは、現実では当たり前に個人がやっていて、2年前にサービス終了しましたが「こえ部」というのもあったりして目新しさはなく、あまりこういったところからメジャーまで駆け上がったというケースは聞かないので、声優として成功というストーリーになるならそういった面でのリアリティがどこまで出せるかといったところ。
あと、出てくるオタクワードがエヴァ、ヤマト、サクラ大戦と何故かやたら古臭く、今のオタク像とずれていて、意図的かもしれないけど少し違和感が。脱サラしたテラさんや、年齢不詳のしのぶの影響となら自然ですが、元々仲良しというわけでもない感じなので。